アルケミスト~夢を旅した少年(パウロ・コエーリョ)の次に読む本

あらすじ

「ピラミッドに宝物が隠されている」という夢を何度も見た半飼いの少年サンチャゴは、飼っていた羊たちを売り、ひとりエジプトへ。不思議な老人や錬金術師、辛い試練や運命の出会い…長い旅を通して「人生の知恵」を学んだサンチャゴを、最後に待ち受けていたものとは…!?

ネリ
ネリ

オバマ元大統領からマドンナ、サカナクションの山口一郎まで…名だたる著名人が愛読書として名を上げる一冊「アルケミスト」。 「前兆に従うこと」「心の声を聞くこと」「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれること」。 エジプト・ピラミッドまでの長い道のりをサンチャゴと共に歩むなかで、生きていくことそのものが「錬金術」のようなものなのだと気付かされます。

自分の中に、ものすごい宝物が眠っている…そう「信じる力」を与えてくれるのが、この本の持つパワーではないでしょうか。 「傷つくのを恐れることは、実際に傷つくよりもつらいものだと、おまえの心に言ってやるが良い。夢を追及している時は、心は決して傷つかない。それは、追及の一瞬一瞬が神との出会いであり、永遠との出会いだからだ。」(本文より)

人生の縮図のような起伏の激しい少年の旅を通して、生きること・出あうことは全て無意味ではなく、未来の希望に繋がっている…と勇気をもらえる本です。

次に読む本

たからもの(ユリ・シュルヴィッツ)

貧しい男・アイザックは、ふしぎな夢を見る。「都へゆき、宮殿の橋のしたで、たからものをさがしなさい」。3回目に同じ夢を見た後、旅にでる決心をするアイザック。たどりついた都でアイザックは、宮殿をまもる衛兵隊の隊長から、おもいがけない話を聞くことに…。

ネリ
ネリ

1980年コルデコット賞「銀賞」受賞作。 これは、世界のあちこちで語り継がれてきた「橋で宝物を見つけなさい」という夢を見る話をもとにしている…と訳された安藤紀子さんが刊行時に寄せられたメッセージで語っておられます。(偕成社HP参照) 優しくも少しくすんだ色彩や、深みと人生の悲哀さえ感じる人物の佇まいは、どこかノスタルジック。 4才で第二次世界大戦をむかえ、家族で祖国のポーランドを脱出、各地を転々としたユリ・シュルヴィッツの個人的背景も考えると、この絵本の持つ意味がさらに深く感じられたり…。

子ども用なのに重厚で、神聖な空気感を伴った内容と絵柄には、大人の方が引き込まれてしまうこと間違いなし! 「行きて帰りしものがたり」として前半と後半は呼応しており、場面や使われる言葉が似ていたり同じだったりします。 だけど、往路と復路ではまったく異なる温度感…読み手も「何かを手にした」気持ちになります。 そして「かいじゅうたちのいるところ」を連想させる、文字のみで描かれた「はじまり」と「おわり」の部分。 読み手の心がアイザックと一緒に旅できるように工夫された作り手の細やかな「仕掛け」が魅力です。 アルケミストとは異なる、アイザックが衛兵の隊長に対して最後に取った行動が、個人的には大好きだったりします。

ネリ
ネリ

絵本「たからもの」は、ひと言で言うなら「5分版アルケミスト」。 両者の展開は似ているけれど、メッセージは突き詰めると微妙に異なる印象もあります。 「アルケミスト」の骨子が、小さい子にも分かる形で描かれている「たからもの」は、なんと言っても絵が美しい!! この絵に触れるだけでも大きな価値のある一冊ではないでしょうか。

早さや安さ、利便性や効率を追求し続けてここまで来た私たち…。 でも本当にこのままで良いのかな?これが「しあわせ」なのかな? 「たからもの」での遠い遠い都までの道のり…「ときには荷馬車に乗せてもらったが、おおかたをあるいた」。 そのアイザックの道中からも、人生について色々なことを考えさせられます。 自分の内なる神と繋がる意味をドラマティックな展開と描写力、数多くの例えなどで表現する「アルケミスト」。 一方、必要最小限の言葉とユリ・シュルヴィッツの「絵」自体が持つ力で心に強い印象を残す「たからもの」。 同じようなテーマを対照的に表現したこの2冊は、読むたびに不思議な自己変容を感じさせつつ、物事の背景にある「ほんとうのこと」を知るためには遠回りも必要なことを教えてくれます。 花も嵐も踏み越えて、紆余曲折を経てじっくり熟成された蒸留酒みたいなところに、人生の醍醐味はあるのかもしれません。




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