3月3日に読む本は、レインツリーの国(有川浩)

3月3日は

耳の日

耳の日、ということで、聴覚障害者が登場する小説、レインツリーの国を紹介します。

「図書館内乱」(有川浩)の中に出てくる本ですね。

本の中に出てくる本が、実際に執筆・出版されているのは興味深いですね。

ラノベ「フェアリーゲーム」

※「レインツリーの国」の中に登場する架空のラノベ小説。

高校生たちが、ヒロインを守るために、謎の組織と闘う、というストーリー。最後、ヒロインは、自分一人で逃げる選択をする。他の人を巻き込まないためだった。

ありがちなストーリーですが、結末は意外ですね。

レインツリーの主人公の伸と、ヒロインのひとみとの関係と、重なる部分もありますね。この仕掛けが見事です。

ウェブサイト「レインツリーの国」

伸行は、フェアリーゲームの感想をインターネットで探していて、「レインツリーの国」というウェブサイトを見つける。レインツリーの国の管理人が、フェアリーゲームについて語っていた。伸行は管理人にメールを送る。ハンドルネームは「伸」にした。

レインツリーの国の管理人のひとみは、伸に返信を出す。フェアリーゲームについて語り合い、議論しあう。伸は意を決し、ひとみに会いたい、と告げる。

ひとみは、乗り気ではなかったが、伸は「電話だけでも」と食い下がる。ひとみは会うことにOKした。

初デートは……

初デートは雨の日だった。傘でお互いが離れるせいもあって、会話がうまくいかない。

食事のお店は、ひとみの要望で、しずかな店にした。すいていたが、料理はあまり口に合わなかった。

映画を見に行くことにしたが、ひとみは洋画の字幕を希望する。面白そうな映画は満席で、吹替なら席があったが、ひとみは別の洋画(字幕)を希望する。映画はイマイチだった。

映画館から帰るエレベーターで、ひとみと伸が乗ると重量オーバー。伸は慌てて降りるが、ひとみは平然とエレベーターに乗り続ける。伸はひとみをエレベーターから引きずり出し、怒りをぶつけた。

伸の視点でみると、ひとみの行動は不可解な点が多いですね。特に、重量オーバーで降りないのは理解しにくい。

実は、ひとみは聴覚障害を持っていた。重量オーバーのメッセージも、エレベーターに乗っている他の人の声も、聞こえていなかった。

ひとみが、自分が聴覚障害だとカミングアウトするまで、そのことに気づきませんでした。

ひとみは「カミングアウトしたくない」

伸は「カミングアウトしてくれれば配慮できたのに」

このすれ違いは、現実にありそうですが、難しいですね。

初デートはちぐはぐでしたが、この後も伸とひとみの交流は続いていきます。

聴覚障害にもさまざまなタイプが

聴覚障害にも、先天的なもの、後天的なもの(事故・病気など)があり、症状も人によって異なります。聴覚障害がある人がみな、手話を使えるわけではありません。

読み進むにつれ、伸とひとみのやり取りを通して、こういった内容も知ることが出来ます。

レインツリーの花言葉は

歓喜、胸のときめき

ひとみの聴覚障害だけでなく、伸の父親の話も辛いです。伸とひとみがお互いにぶつかり合う場面は、相当激しいです。

他人のことを完全に理解するのは難しい、というか不可能かもしれません。「レインツリーの国」を読んで痛感しました。けれども、理解しようと努めることはとても大事だな、と思わされます。

レインツリーの国は、玉森裕太主演、ヒロイン西内まりやで映画化もされています。映画ではかなりマイルドになっていました。




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