耳の日
耳の日、ということで、聴覚障害者が登場する小説、レインツリーの国を紹介します。
「図書館内乱」(有川浩)の中に出てくる本ですね。
本の中に出てくる本が、実際に執筆・出版されているのは興味深いですね。
ラノベ「フェアリーゲーム」
※「レインツリーの国」の中に登場する架空のラノベ小説。
高校生たちが、ヒロインを守るために、謎の組織と闘う、というストーリー。最後、ヒロインは、自分一人で逃げる選択をする。他の人を巻き込まないためだった。
ありがちなストーリーですが、結末は意外ですね。
レインツリーの主人公の伸と、ヒロインのひとみとの関係と、重なる部分もありますね。この仕掛けが見事です。
ウェブサイト「レインツリーの国」
伸行は、フェアリーゲームの感想をインターネットで探していて、「レインツリーの国」というウェブサイトを見つける。レインツリーの国の管理人が、フェアリーゲームについて語っていた。伸行は管理人にメールを送る。ハンドルネームは「伸」にした。
レインツリーの国の管理人のひとみは、伸に返信を出す。フェアリーゲームについて語り合い、議論しあう。伸は意を決し、ひとみに会いたい、と告げる。
ひとみは、乗り気ではなかったが、伸は「電話だけでも」と食い下がる。ひとみは会うことにOKした。
初デートは……
初デートは雨の日だった。傘でお互いが離れるせいもあって、会話がうまくいかない。
食事のお店は、ひとみの要望で、しずかな店にした。すいていたが、料理はあまり口に合わなかった。
映画を見に行くことにしたが、ひとみは洋画の字幕を希望する。面白そうな映画は満席で、吹替なら席があったが、ひとみは別の洋画(字幕)を希望する。映画はイマイチだった。
映画館から帰るエレベーターで、ひとみと伸が乗ると重量オーバー。伸は慌てて降りるが、ひとみは平然とエレベーターに乗り続ける。伸はひとみをエレベーターから引きずり出し、怒りをぶつけた。
伸の視点でみると、ひとみの行動は不可解な点が多いですね。特に、重量オーバーで降りないのは理解しにくい。
実は、ひとみは聴覚障害を持っていた。重量オーバーのメッセージも、エレベーターに乗っている他の人の声も、聞こえていなかった。
ひとみが、自分が聴覚障害だとカミングアウトするまで、そのことに気づきませんでした。
ひとみは「カミングアウトしたくない」
伸は「カミングアウトしてくれれば配慮できたのに」
このすれ違いは、現実にありそうですが、難しいですね。
初デートはちぐはぐでしたが、この後も伸とひとみの交流は続いていきます。
聴覚障害にも、先天的なもの、後天的なもの(事故・病気など)があり、症状も人によって異なります。聴覚障害がある人がみな、手話を使えるわけではありません。
読み進むにつれ、伸とひとみのやり取りを通して、こういった内容も知ることが出来ます。
歓喜、胸のときめき
ひとみの聴覚障害だけでなく、伸の父親の話も辛いです。伸とひとみがお互いにぶつかり合う場面は、相当激しいです。
他人のことを完全に理解するのは難しい、というか不可能かもしれません。「レインツリーの国」を読んで痛感しました。けれども、理解しようと努めることはとても大事だな、と思わされます。
レインツリーの国は、玉森裕太主演、ヒロイン西内まりやで映画化もされています。映画ではかなりマイルドになっていました。
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