あらすじ
【娘の病気を治したい、両親の物語】 主人公である中学3年生の少女、ちひろは 生まれた頃から病弱だった。湿疹が治らず 泣き叫ぶちひろを救いたいその一心で、 あらゆる薬を試したが治らない。 そんな時、ちひろの父は会社の同僚から とある 「 水 」 を勧められる。 なんと、その水でちひろの湿疹は治った。 それどころかその水を飲むようになった両親も風邪ひとつ引かない健康体に。 この出来事をきっかけとし、 ちひろの両親は「金星のめぐみ」という その水を売っている新興宗教団体へのめり込んでいくことになる。 言われるがままに従う両親、その強い信仰心は少しずつちひろの家族を歪な形にしていく。ー という物語。
最初に抱いた感想として、 物語の中で「宗教=悪いもの」としては書かれていないのだな ということ。 例えば著書の体験を通して、宗教にのめり込む恐ろしさを描いたもの等もありますが 本書はちひろの視点で目の前で起きている事が淡々と描かれている。 ちひろが感情的になり、宗教団体の言いなりになる両親を批判したりしない。 しかし、淡々と書かれている分読み手のこちら側が 無理に感情を押し付けられない分状況を想像することができ、 ちひろ本人より感情の増幅が大きくなったりする。
自分に関係ない、 ほとんどの人が思うかもしれないけれど 若返る、綺麗になれると信じ、高級な化粧水を惜しげも無く使い続ける方だっている。 科学的には証明できない御守りだってそう。 これも形や度合いは違えど「洗脳」の1つで、皆何かしらを信じている。 とはいえ、当然「信じすぎる」ことは 決して良いことではない。
本書の題材があくまで宗教でしたが、 身近な物(例えば化粧品、健康食品 等)であっても 盲目的に何かにのめり込む事は 身を滅ぼしてしまう可能性がある、 といったことを教えてくれる物語でした。
次に読む本
アーモンド/ソン・ウォンピョン
主人公は失感情症。祖母から世界一可愛い怪物と呼ばれる少年・ユンジェ。 扁桃体(アーモンド)が他人より小さく、 怒りや恐怖といった感情を感じることができない。 そんな彼は、15歳の誕生日に目の前で祖母と母が通り魔に襲われるが、ただ無表情でその光景を見つめているだけだった。 ユンジェの母は、感情がわからない息子に「喜」「怒」「哀」「楽」「愛」「悪」… 様々な感情を丸暗記させることで、“普通の子”に見えるように訓練してきた。 だが、母は通り魔事件から植物状態になり、ユンジェは孤独になってしまう。 そんなとき、激しい感情を持つユンジェと正反対の“怪物”、ゴニに出会う。 その少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていく。
怪物が愛で変わっていく物語でした。 ですが、衝撃的なテーマのわりには 物語が淡々と描かれ、進んでいくので読みやすい。 その「贅肉の無さ」のようなものからか 主人公のユンジェには感情が無いのに 何故か読み手には葛藤が伝わってくるといった不思議な作品。 ユンジェには感情がない分、 きっと私のように自分の利害を考えたりしないだろう。 無垢だから周りから周囲から逸脱したゴニとだって心を通わせることが出来る。 見習うべき事がたくさんある作品。 正反対のユンジェとゴニはどちらも1人では不完全。
星の子がとても淡々と語られるような作品だったので、 そんな描き方をされた物語が好きな方に お薦めしたいと思い上記2冊を組み合わせてみました。 どちらも話題作ということもあり、 手に取りやすい というところも大切なポイントです。 内容が病や新興宗教等、少し重いにも関わらず シンプルな描き方だからなのか、 薄暗さは無く、とても読みやすいです。
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