『就活闘争 20XX』(佐川恭一)の次に読む本は

あらすじ

時は20XX年、超次元的少子化対策によって到来したウルトラベビーブームの約20年後。
個人レベルでの競争が激化し、就職率の悪化が大きな社会問題となっていた。
特にウルトラベビーブーム世代の就職活動は、まさに血で血を洗う争いが繰り広げられる。

京都大学三回生の太田亮介は、人と争うことがあまり好きではないのんびり屋。
しかし、親や周囲からのプレッシャーに押され、日本を牛耳る巨大企業「Z社」入社にチャレンジすることに。

失敗すれば文字通りの死を意味するOB訪問、インターンシップ、グループディスカッション、面接試験…。
地獄のような就職活動を乗り越えた先に、彼は何を見出すのか。

もものじ

主人公は、大学生になるまでは親の敷いたレールの上を走り、大学生活は満喫しつつも、将来のやりたいことが見つからないまま就職活動をする年になってしまった学生です。
小説内で描かれる世界観は、あらすじで説明した以上にハチャメチャです。
ただ、主人公は読者が共感しやすいキャラクターで、かつその世界観に常に疑問を抱き続ける存在なので、安心感を持って読み進められました。

家族が一人入社すれば、その前後三代は安泰とされるほどの巨大企業Z社。
そこへ入社するためには、OB訪問の段階から命を懸けなければならないというトンデモぶりです。
想像よりも遥かに簡単に人が死んでいくので、こちらとしては現実味がどんどん薄れていく感覚があったわけですが、主人公が流されないのも良かったです。

そしてハチャメチャな世界観だからこそ、現実の社会と通底する部分が見えてくることもあります。
主人公の成長を追いかけている内に、背筋が正されていくような気持ちになりました。
就職活動に入る前に読めば、その向き合い方が変わるかもしれません。

次に読む本

『六人の嘘つきな大学生』(浅倉秋成)

2011年、成長の著しいIT企業「スピラリンクス」が初の新卒採用を実施。
多数の応募者の中から最終選考に残ったのは、それぞれに見どころのある6人の大学生たち。
最終選考として、一つのチームとなってグループディスカッションをするという課題が出され、6人は結束力を強めていく。

しかし、最終選考の直前に人事部から届いた1通のメール。
6人全員が内定を勝ち取る可能性も示唆されていた選考は、突如6人から一人を選ぶ形に変更されることとなった。
仲間から一転してライバルとなった6人。
更に最終選考の場で、「●●は人殺し」という告発文まで発見されて…。
犯人は誰なのか、そして彼らの行く末はどうなるのか。

もものじ

就職活動を題材とし、最終選考の場を舞台としたミステリー小説です。
まず、せっかく仲間としての連帯感が芽生えていた6人が突如ライバル同士になるということで、なんとも切ない気持ちになりました。
就職活動である以上、同じ会社を志望する人間同士がライバルであるのは当然ですが、チームになるように指示しておいてからのこれは酷い。
私は人事部長に対して怒りを燃やしていました。それだけ真剣になって読める作品だったということでしょう。

また、新卒採用の選考に挑む学生の気持ちもしっかりと描写されているので、特に就職活動経験者の共感度は高くなると思います。
ミステリーなので具体的な内容に触れることは憚られるのですが、話がスムーズに進行する上に、謎解きも一直線の展開ではないので、面白く読める作品であることだけは言っておきます。

おススメポイント

もものじ

紹介した2冊に共通するのは、「就職活動」を題材にしている点です。

1冊は20XX年の誇張された就活、もう1冊は2011年の現実に即した就活で、世界観こそ異なるものの、就活生となる主人公たちのマインドは変わらないように思います。
社会に出る前の学生が、より良い将来を夢見て、自分とは何か、働くとは何か、考えては行動し、行動しては考えていく…。
人によりますが、大体の場合、学生でありながら就活生でもあるという時代は長い人生の中の一瞬です。
その一瞬の青春を切り取っているからこそ、どちらも私にとっては印象に残る作品になったのかなと思いました。

『就活闘争 20XX』はテンポの良さと波乱万丈の展開、『六人の嘘つきな大学生』は早く真相が知りたくなる展開で、すいすいと読み進められるところもおすすめポイントです。
特に就職活動に入る前の人に読んでみてほしい2冊です。
順番はどちらが先でも大丈夫なので、気になる方からぜひ。


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