あらすじ
ドイツの田舎町で、天才と呼ばれた少年ハンス。彼はその純粋さから、周りの大人達の期待に応えようと神学校への入試を志す。 猛勉強の末、晴れて入学となったハンスだが、学校は規則だらけでハンスの心は擦り切れていく。そんな時に出会った学友のハイルナーはとても自由で奔放。彼を見ている内にハンスはますます窮屈な想いを募らせ、成績も下がっていく。そして心ない大人達はそんな二人を許さずに…
「詩人になれないなら、何にもなりたくない」という言葉を残したヘッセの自伝と呼ばれる小説です。 すごい言葉ですね。背景は知りませんが、これだけ聞くと、自尊心を拗らせたニート志願者のようだ… ただ、彼の詩人(素朴な美しさが分かり、それを紡ぐことの出来る人間)への憧れは作品の中でもヒシヒシと伝わってきました。詩を嗜むハイルナーの登場が、ハンスから見る世界に色をもたらしていきます。自我の目覚めともいうのでしょうか。 そこで理解のある大人や、ハンスに勇気があったら明るい道もあったのかも。しかしハンスは挫折します。 周りの理解を得られるかどうかは子どもにとっては大きいですよね…。ただ、少なからずハンスには自分で選べる余地というかタイミングもあったと思うんですよね。そこに目を向けず、車輪の下にひかれにいったのはハンス自身に他ならないようにも思えました。
次に読む本
『ドリトル先生アフリカ行き』ヒュー・ロフティング
医学博士のジョン・ドリトル。彼は大の動物好きで屋敷中に何匹もの動物を飼っていた。オウムのアドバイスにより、動物の言葉をマスターし動物のお医者になったドリトルだが、彼の奇行に患者は少なく暮らしは貧乏。それでも動物達と協力して明るく生活していた。
ある日、ツバメによってアフリカの猿達が深刻な伝染病だと聞いたドリトル先生は、アフリカに渡る決意をする。やっとのことでアフリカに辿り着いた先生一行だが、アフリカの王国の国王は白人嫌いで、先生は投獄されてしまう。 様々な困難を乗り越えて、果たしてドリトル先生達は無事に帰って来られるのか?!
ドリトル先生シリーズの1作目です。児童書ですが、子ども向けとあなどるなかれ! ドリトル先生の何が好きって、不思議な力で動物と会話するんじゃないんですよ。先生はちゃんとそれぞれの動物の言葉をマスターして、例えば犬と話す時にはコートの裾を尻尾に見立てて話すんです。 そんな先生は偉大にもかかわらず、人々からは奇人扱いされる。でもドリトル先生はどこふく風。ぜーんぜん気にしない。 先生の、特別なことではなく当たり前のことをしているという姿勢が、なんだかとっても素敵。映画も出ているけど、イメージが全然違う!全くの別作品だと思ってる。 子どもの頃に読んだ人も、今また読めば違った面が見えるはず。
『車輪の下』はいわば、世間の目と自分でイメージする自分の呪縛にとらわれて潰れていった話といえます。 それに対してドリトル先生は、世間の目なんてなんのその!自分の信じた自分のいく道をひたすらに進み、その結果彼を慕う人間は少ないですが、彼が大好きな動物達からはウンと慕われます。 ハンスにも、こんな生き方があるのだと知って欲しかったという意味も込めて紹介します。
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