SF短編集。どれも傑作です。
あらすじ
「商人と錬金術師の門」タイムトラベルができると知った主人公。時間移動は可能だが過去を変えることはできない、と知らされてもタイムトラベルする決心をする。
「息吹」機械生命の生存する世界で、時間の流れに異変が発生する。その異変は、彼らを滅亡に追いやる運命。
「予期される未来」自由意志について考察する。
「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」仮想生命をペット的に扱う世界。仮想生命を育てる・共に暮らす、がテーマ。仮想生命に必要なソフトウェアなどが提供されなくなると、その生命体は『死』を迎える。
「デイシー式全自動ナニー」子育てする機械、機械に育てられた男の子の物語。
「偽りのない事実、偽りのない気持ち」記憶の思い込み・間違いを題材に、父と娘の関係を描く。
「大いなる沈黙」地球外生命体は存在するのか否か。
「オムファロス」地球が数百年。前に作られた世界。地球誕生の証拠を示す化石の出処を追うと…
「不安は自由のめまい」並行する宇宙と交信できる機械プリズム。プリズムの存在は人間の選択にどんな影響を及ぼすか。
短編集のあらすじを詳しく書くとネタバレになってしまうので、まずは「息吹」を読んでほしいです。
次に読む本
時空旅行者の砂時計(方丈貴恵)
「商人と錬金術師の門」がタイムトラベルを扱っていたので、タイムトラベルを題材にしたSF&ミステリーを次に読む本に紹介します。タイムトラベルの設定をトリックに活かしたミステリーになっています。
ゾウの時間ネズミの時間(本川達雄)
「息吹」が時間に関する話だったので、体内時計を取り上げている書籍をリコメンドしてみました。体内時計だけでなく、動物の大きさ、という視点から考察していくので新鮮で面白かったです。
アメリカの大学生が自由意志と科学について語るようです。(アルフレッド・ミーリー)
「予期される未来」が自由意志をとりあげていたので。哲学的な議論だけでなく、脳科学、心理学の研究成果も交えて解説している書籍です。対話形式なので読み進めやすいです。ただし内容は結構歯ごたえがあります。
自動人形の城(川添愛)
「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」では言葉を理解する仮想生命が出てきます。そこで、言葉の理解をファンタジー小説の形で描いている自動人形の城を推薦します。
「パンを焼く」のような日常何気なく使う表現を、人工知能に理解させるにはどうすればよいか、など、言語学・人工知能の面白い問題を取り上げています。
子育ての大誤解 重要なのは親じゃない(ジュディス・リッチ・ハリス)
「デイシー式全自動ナニー」がロボットに子育てをする話だったので、本書を勧めます。本書は、発達心理学の革命的な本で、親は重要ではない、子供だけの社会でのポジショニング、などが紹介されています。原著のタイトルはThe Nurture Assumptionです。
ヒューマンエラーの心理学(一川誠)
「偽りのない事実、偽りのない気持ち」が記憶に関する話だったので、認知心理学の入門書を選びました。記憶だとロフタスの研究(交通事故のビデオを見て、「車が衝突した」「車が接触した」「車が激突した」など質問する用語を変えると、質問された人の記憶に影響がでる)が有名で、本書でも第6章で取り上げられています。目撃証言だけだと誤認逮捕や冤罪のリスクが高くなります。
動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか(フランス・ドゥ・ヴァール)
「大いなる沈黙」で、ヒトと異なる知的生命体との接触について取り上げられていたので、またオウムが語る、という形式だったので、動物の知性について書いた書籍を推薦します。「賢い馬のハンス」についての考察は衝撃的で面白かったです。注目すべき点は「馬は算数ができない」ではなく「馬がヒト(飼い主)のかすかな動きを察知できる」。
難しい数式はまったくわかりませんが、相対性理論を教えてください!(ヨビノリたくみ)
「オムファロス」でエーテルの話が出てきました。なのでアインシュタインの特殊相対性理論(エーテルの存在を仮定しないで、光速度一定として時間・空間の概念を構築していく)を取り上げている書籍にしました。使っている数式は三平方の定理だけ、と、数式アレルギーの方でも読みやすい入門書です。
量子力学が語る世界像―重なり合う複数の過去と未来(和田純夫)
「不安は自由のめまい」では量子力学の多世界解釈が出てきます。量子力学の入門書として、少し古い本ですがロングセラーとなっている本書を推薦します。この本を読むと、多世界解釈のほうがコペンハーゲン解釈よりもしっくり来るように思いました。
次に読む本が心理学・認知科学関連が多めなのは私の嗜好が影響しています。逆に物理学は易しめの書籍になっています。
タイムトラベルや、多世界解釈について、詳しくて分かりやすい書籍がありましたら、推薦いただけると嬉しいです。
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