ヒトの言葉 機械の言葉 「人工知能と話す」以前の言語学(川添愛)の次に読む本は、「色のない緑」

あらすじ

言葉を操り、人間と対話しているように見える人工知能(AI)。入力と出力を見る限りはAIが言葉を理解しているかのようである。しかし、AIの内部を見てみると、どうだろうか?大量のデータに基づき計算が行われている。ヒトが言葉を操っているのとは、かなり違った様子である。また、研究者にとって、「なぜAIがその出力をしたか」は理解できず、ブラックボックス化している。

1章は、AIの言葉の現状の紹介だったが、2章~4章は、ヒトの言葉についての言語学のお話になる。専門的な内容ではあるが、実例をまじえて分かりやすく解説されているので読みやすい。例をあげると、

「汚職事件」と「お食事券」

これら2つは、発話された音からは区別できない。ではどうやって、人間は「汚職事件」と「お食事券」とを区別しているのだろうか?

水野 史土

おしょくじけんをもらった』と言われた場合、「おしょくじけんという音に2つの解釈の可能性があり、2つを検証したうえで適切な解釈を選んでいる」のではなく、「意識することなく1つの解釈を採用している」ように感じます。

5章では、AIとどう関わっていくか、を考察している。「実用上の不都合がない程度にAIが言葉を扱える」も重要である、と。ただしそれは「ヒトと同じようにAIが言葉を理解し、操る」とは異なるし、混同してはいけない、とも。

次に読む本

水野 史土

言語学・人工知能を扱ったSF作品です。言語学者ノーム・チョムスキーのとても有名な例文が大きな役割を果たしているので、この本を選びました。

言語学の例文から、これほど素晴らしい作品ができあがるのか、と感動しました。

色のない緑(陸秋槎)

ネタバレがあります。

人工知能研究者のモニカが自殺した。

ジュディとエマとモニカは、学生時代に言語学・人工知能の研究を一緒にした。卒業後ジュディは機械の生成する翻訳文のチェック作業を仕事にしている。エマは文書から視覚効果と仮想空間を生成するソフトウェアを開発している。モニカは人工知能の研究を続けていたが、モニカが言語学会に提出した論文が、人工知能の査読により却下されたらしい。

モニカの葬儀で再会したジュディとエマは、モニカとの思い出を語り合う。そしてモニカの自殺について調べていく。ジュディは、モニカと「色のない緑の考えが猛烈に眠る(Colorless green ideas sleep furiously.)」の解釈を語り合ったことを思い出す。

「色のない緑の考えが猛烈に眠る」は、言語学では「文法規則には従っているが意味を持たない文」として、文法と意味の独立性を示唆する文として取り上げられます。ジュディは「規則に従って生きていても、人生が意味を持たない(持つとは限らない)」という、つらい人生の暗喩と捉えました。それを聞いたモニカは、自身の今までの研究がジュディの人生を奪うものだったのか、と気づきます。




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