東日本大震災が発生した日
彩瀬まる先生は、東日本大震災の当日、東北地方を旅行していました。電車に乗っている最中に、常磐線新地駅で地震に遭遇し、列車から出て非難することで、間一髪で津波から逃れたそうです。
震災の様子は、暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出―(新潮文庫)に生々しく描写されています。
震災を題材にした「やがて海へと届く」。2022年4月に映画公開されます。
ホテルのダイニングバーで働く湖谷真奈。3年前、親友の卯木すみれが旅行中に震災に遭遇し、行方不明に。すみれの恋人の遠野敦が、すみれの私物を整理するから、と連絡してくる。
他の人達は、すみれを死んだものとして、受け入れていく。しかし、真奈は、まだ、受け入れることができないでいる。
親しい人が、突然いなくなる。すぐには受け入れらないと思います。
3年という時は、一般的には長いと思われますが、もし、自分がそういう立場だったら、何年たっても区切りがつけられないように思います。
真奈の働くバーの店長から「出勤が遅れる」と電話がある。ダイニングバーは営業を始め、真奈も働く。店長はちっとも現れない。
実は店長は自殺していた。
読んでいて、かなり唐突に店長が死んだ印象を受けました。もし「身近な人が突然亡くなった」としたら、こういった感じなのかもしれません。
ダイニングバーのキッチンスタッフの国木田さんは、無口でとっつきにくい印象だったが、真奈と親しくなっていく。
国木田さんが、無口だけど包容力のある感じの優しい方で、真奈がすみれの死を受け入れ、乗り越えていけたのでしょう。
偶数章はさまよう女性視点
奇数章は真奈視点だったが、偶数章では、さまよい続ける女性視点で進む。バスが来ない、列車が来ない、など先へ行けないことを示唆するかと思えば、老婆が「振り返ってはいけない」と言ったりする。
幻想的な偶数章は、さまよう女性がこの先どうするのか?が興味深かったです。
すみれの死を受け入れられず、真奈は葛藤するところから小説が始まります。重苦しい雰囲気で進んでいき、中盤で店長が自殺したときには、これは凄い辛い展開になるのか、と思いました。
後半は、国木田さんと中が深まっていく、カフェの女子高生二人組と話す、そうしていく中で、少しずつ、親友の死を受け入れていきます。
死は避けられないものです。もし、親しい人が死んだとしたら、真奈のように葛藤するかもしれません。頭では、区切りを付けなければ、と思いつつも、前に進めないように思います。
一方で、自分が区切りを付けれないとしても、他の人が区切りをつけるでしょう。他の人の区切りの付け方が、仮に自分の目からは早すぎる区切りに思えたとしても、尊重しなければと思いました。
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