あらすじ
ある出来事から中学校へ行けなくなってしまった”こころ”。
ある日、自室の姿見が虹色に光り、かがみの向こうの城へと招待される。
城へと招かれたのは、こころを含め同年代の少年少女が全部で7人。
彼らの前に現れた、狼のお面を被った女の子、自称”オオカミさま”は、願いの鍵と部屋を見つけた者には何でも1つ願いが叶えられると言う。
ドンデン返しの女王、辻村深月が描く、不思議で優しいファンタジー。
何度も泣きそうになった。
ラストは読めていた。
でも、巧みに繰り出される出来事、胸を打つセリフにページを繰る手が止まらない。
子ども達は皆勝手で、特に主人公の”こころ”にはイライラさせられた。
言いたいことも思ってることも、何一つ言わない。態度に出さない。
分かってくれない、どうせ理解されないからと決めつけておいて、大人や世の中は理不尽だという顔をしている。
言えば良いじゃないか!
言わなきゃ分かんないんだよ!
助けたいと思ってるかもしれないじゃない!
そこでハッとする。
私もだ。大人も子どもも関係ない。
傷つくことを怖がって、助けて欲しいのに自分からは手を伸ばさず、なのに分かってくれないと拗ねている。
まったく、理不尽なのはどっちなのかと呆れてしまう。
学校に行けなかったり、一人で欝々としている子が、つらいそのタイミングでこの本に出会えたら良い。きっと救われるんじゃないかな。
そして大人も、素直になってみようと顔を上げられるお話。
次に読む本
『逃亡くそたわけ』絲山秋子
福岡の精神病院で入院中の”あたし”。21歳の夏をこのプリズンで終わらせてしまうのは嫌だ!
たまたま居合わせた”なごやん”を道連れに、彼のぼろぼろ車での逃亡旅行が始まった。
すごいタイトルだな。表紙の投げやりな感じと妙にマッチしてるし。
正直、どんなヤクザな主人公のすさんだ話かと思った。そしたら博多弁ばりばりの元気な女の子が、おちおちノースリーブも着られないプリズンから脱走する話だったとは。
強烈な方言には面食らうが、読み始めて早々”なごやん”の呼び名の由来あたりで、もうこの登場人物2人のことが大好きになってしまった!
抜けてて計画性もなくって、逃亡中だというのに無邪気にお団子食べたりして(可愛い)、でもどこかずっと不安げで。
ずっと逃げ続けられる訳ではない。夏休みが終わるようなラストは、この物語に相応しかった。
両作品に共通して感じられるテーマが”子どもから大人への成長”。
主人公が中学生だろうが21歳だろうが、人はいつでもふいに少しだけ大人になるタイミングがある。嫌なことから逃げていた子ども時代から、向き合ってみようと足を止め大人になったそこまでの過程を、爽やかに描き切った作品が読みたいなら是非。
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