あらすじ
明けた朝は寒く灰色だった。おそろしく寒い、灰色の日。なにもかもが雪で真っ白で、どこまでも白がつづく。摂氏マイナス107度の世界。一人の男が一匹の狼犬を連れて、クリークを歩いていた。「零下50度以下になったら何人たりとも一人で旅してはならない」と言われていたのに、彼はたった一人だった。やがて道に迷った彼の足を冷気が凍らせていく‥‥。
次に読む本
越境(コーマック・マッカーシー)
メキシコとの国境近くで暮らす少年ビリーは、ある日捕らえられた狼の美しさに魅せられる。この美しく高貴な狼を自然に帰したいと思ったビリーは、国境を超えて、ありのままの自然が残るメキシコの荒野へ。しかし、懸命の努力にもかかわらず、狼は死んでしまう。そして、抗えない運命の流れに巻き込まれていく‥‥。
最近映画化され話題となっているジャック・ロンドンですが、社会主義に傾倒した啓発目的の作品よりも、厳しい自然をストイックに描いた、非常に美しい作品の方が文学的価値は高いのではないでしょうか。
『火を熾す 』は、まさに宝石のような珠玉の小説を集めた短編集です。 『越境』は、荒野に生きる人々を描いたマッカーシーの哲学的作品。美しいけれど厳しい自然、ドライでクール、思索的な味わいが『火を熾す 』に通じるものがあります。ジャック・ロンドンの自然をテーマにした作品が気に入った方は、マッカーシーの作品にもきっと心動かされるものがあると思います。
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