『東大発!1万人の子どもが変わった ハマるおうち読書』笹沼颯太の次に読む本は

あらすじ

子どもが読書にハマるオンライン習い事「ヨンデミー」を、著者は運営している。
子どもたちに読書習慣を身につけさせるためのサービスで、登録者数が累計1万人以上を突破した。

ヨンデミーでは、子どもに適切な本を紹介するために、本の難易度とジャンルを独自の基準で分類した。
その基準に基づいて、AIが子どもにささる本をピックアップしてくれる。
また読書習慣を身につけるべく、AI先生とのチャット形式のやりとりや、読書記録もつけることができる。

家庭教師をしていた東大生の著者が、保護者から子どもの本嫌いを相談されたことをきっかけに、このサービスを開発した。
大人による読み聞かせから、自力で本を読む・ひとり読みへの移行を助けることを目標とするサービスである。
本書では、ヨンデミーが行なっている読書メソッドを公開している。

子どもが本を読むためには、本の長さと難易度、そして好みの本かどうかが鍵になる。
一冊読み切るための集中力と興味が、継続するように、その子にあった本を提供する必要がある。
そして、本を読了したという成功体験が次の本へと誘う足掛かりになるのである。
大人は1人1人の子どもたちにささる適切な本を紹介し、彼らの読書体験を温かく見守る。
読書という歯車が自然に子どもたちの中で回り出すようにサポートするメソッドが紹介されている。

[本書の内容]
・おすすめの100冊
・読書で得られるメリット
・子供にささる本の選び方
・読書をするための環境づくり

りお

子どもたちが進んで本を読み始めるためにはどうすればいいのかを、本書では探求している。
著者自身や読書家の実体験を通して、どういったきっかけで本好きになったのかを調査した。
その結果、お気に入りの1冊を見つけること、そしてその本を自力で読む経験を作ることだと著者は語る。
読書の面白さを知ると、本を読むこと自体がご褒美であり動機づけになっていく。
すると子供たちの中で、読書のサイクルは自然に回り始めるのだ。

本書を読了後に、なぜ自分が本を好きになったか、そのルーツを探してみた。
私の周りには、いつも手に届く場所に本があり、素敵な装丁が私の手を本に向かわせていたことと思う。
気づけば私は子どもの頃から本が好きだった。
それは母の教育理念である「読書は心の栄養」に由来する。
母が惜しみなく本を与えてくれていたことが、本好きのきっかけになったと思う。
本書がターゲットとする、子どもに本を読んでほしい保護者たちと同様に、本による心の教育を母も目指していた。
保護者たちの思いから、子供たちの読書体験が心を豊かにしてくれることを願う。

しかし現実では、娯楽に溢れた生活の中で、大人と同様に、子どもの読書離れも進んでいる。
テレビやYouTubeに、SNSなどが空いた時間を嫌う私たちの隙間を埋めてくれる。
受動的になれる娯楽は、簡単に欲求を満たしてくれるため、つい手が伸びてしまう。
その間隙を読書に置き換えられたら、思考力がつき、知識も増え、心身ともに癒しの時間になるのではないだろうか。

読書は大人になっても使える武器になると著者は語る。
必要な時に必要な本を選び、読書を通して、その時々で必要な知識を得ることができるからである。
子どもたちが自力で読書をする楽しさを知り、文を読むという行為を味方にする。
そうすれば数多の本の知識が一生涯通じる武器になってくれるのだ。

保護者の方、教育関係者、図書館員・書店員の方にも本書を読んで、これからの読書教育の礎を築く手がかりにしてもらいたい。
また読書体験を通して、子どもとの向き合い方をも見つめ直す一冊である。

次に読む本

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 三宅香帆

大人になって働き始めると、読書ができなくなる。
普通の大人が求められる労働、つまり週に5日8時間という働き方によって、趣味を諦めざるを得ない状態になってしまう。
SNSやYouTubeを見る時間はあるのに、本を読む時間も体力もない。
このような現代人は少なくないだろう。

本は趣味に置き換え可能である。
大人になると、スポーツができない、ライブに行けない、勉強ができないといったように、学生時代には行えていたはずの趣味の時間が減っていく。

本書は「仕事と趣味の両立」で悩んだ著者が、労働と読書の歴史を辿る。
労働と趣味の両立できる社会を目指し、日本の働き方の問題点を見つめ直す。

りお

読書史と労働史を振り返りつつ、仕事と趣味の両立ができる社会を目指すという本である。
明治以降の読書は社会的地位向上や教養を身につけるための手段として、読書は仕事と両立されていた。
戦後、読書は娯楽という価値が高まっていくと同時に、広く大衆に広がっていく。
現代では、大量に受信する情報を取捨選択するべく、仕事に関係しないものはノイズとして排除するようになっていると著者は語る。
読書や趣味もノイズの一部であり、仕事第一の生活において優先度が低く、追いやられてしまっている。

私は趣味が読書のため、学生時代と変わらずに本を読む時間をあえて作っている。
しかし友人たちは、社会人になって圧倒的に読書時間が減っている。
かつて面白い本を紹介し合い、感想を述べ合った仲間たち。
今では忙しさのあまり、本を開く心の余裕はないようだ。

外側ばかりを着飾ったSNSを眺めて余暇を過ごす社会人の姿が、本書で紹介されていた。
簡単な娯楽に流れてしまう大人の姿は、よくある風景として一般化してしまっている。
仕事にすべてをかけて、空虚になりつつある大人たちの働き方と風潮に、著者は警鐘を鳴らす。
著者の述べるように、全身全霊をかけないと、努力したと認められないような風潮が確かにある。
「まだ自分はできるはず」「余白がある」として、全身を捧げることを自分にも他者にも強制する雰囲気が社会を取り巻く。
燃え尽きてしまうほどに、努力することを英雄として称賛する視座が私たちを苦しめている。

そこで仕事も趣味も全身ではなく、半身で取り組むことを著者は推奨している。
1つのことに120%全力で取り組むのではなく、半身で様々な文脈に身を置くべきだという。
現実的な社会の中で、半身としての具体的なあり方は示されていないが、我々一人一人がライフ・ワーク・バランスを見つめ直すきっかけを与えてくれる。

おススメポイント

りお

今回紹介した2冊は読書習慣を身につけるための本である。
子供に本を読んでもらいたいとき、その保護者も本と向き合わなくてはいけないと思う。
共に読書をする機会をつくり、大人が読書を楽しんでいる姿を見せる。
その姿を見た子供たちの興味が、自然と本に向かっていくのではないだろうか。

読書体験を通して、子どもたちとの向き合い方を学ぶと同時に、保護者の方も人生を豊かにするために生活を振り返ってみるのはいかがでしょうか。


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