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黄色い家(川上未映子)の次に読む本はオンナの値段(鈴木涼美)

あらすじ

主人公はある日目にしたネット記事で以前一緒に暮らした人の名前を見つけ、同じ家で暮らしていた元少女に連絡を取る。

中学生の主人公は経済力と社会的通念のない母親と古びた文化住宅に二人暮らししていた。ヤンキーにからかわれ、嫌がらせの言葉を浴びせられていたがある日泊まりに来た女性と二人でコンビニに行ったことでいじめはおさまる。
高校に進学した主人公はアルバイトを始め、貯金箱の中のお金が増えていくことだけを心の支えにしていた。だが母親が連れ込んだ柄の悪い男性に持ち逃げされ、すべての気力を失ってしまう。そこに、中学の時泊まりに来た女性がスナックを開くから家を出て手伝わないかという誘いがあり、主人公は高校を辞めスナックで働き始めふたたび貯金に執念を燃やすが、ある日スナックが火事で燃えてしまう。その上、母親が騙されて作った借金で貯金がほぼ消えてしまい、稼ぐ手段がなくなった彼女はある“仕事“を始める──。

真野いずみ

途中までは順調なように思える主人公の生活だが、同い年の少女らと同居を始め、その生活を維持することが目的となり、スナックが潰れてからは最初はほとんど安全なように“思える“仕事を始める。しかしそれからはどんどん深みにはまってしまい、危ないとわかっているのだがリターンが大きいためやめられない。ひりひりする焦燥感と、主人公と他の人物の温度差が激しく一気に読んでしまった。おそらく本来の性格ならば「そんなことは決してしない」はずだが、環境が災いし気づいた時には後戻りのできないところにきてしまう。裏社会の激しさと、生育環境や生きるための賢さによって引き起こされるさまざまなドラマが素晴らしい。

次に読む本

オンナの値段(鈴木涼美)

著者をはじめとする女性がどのように稼ぎ、どのようにそのオカネを消費していくかをありとあらゆる事例を挙げて語っている。デリヘルに一年中出勤している女性、ホストに2000万円遣った女性、妊娠・出産をすべて売った女性、著者をはじめとする2000年頃のブルセラ・女子高生ブームなど。

真野いずみ

著者は長く夜の街でキャバクラ・AVの現場におり、さまざまな女性を見ている。また、慶應大学出身という一面もあり、女性がどのようなかたちであれ高収入を得た時、その遣い道はなんなのか、女はなんのために働き稼ぐのか、究極の問いを投げかけてくる。また、逆に働かない、遣っても払わない、というタイプの女性、ダブルワークをしてでもものすごく貯金をする女性も登場する。たとえばシングルマザーであればそれは子を養うためであったり、はたまたギャンブルのためであったりする。


消費するモノやコトが溢れかえった資本主義社会で、主に女性性を売る彼女たちの高収入の遣い方はどこか私たちのようでもあり、極端でもある。けれど、これはこの社会に働く者として投げ出された女性の生き方であり、おそらくはこの本に登場する女性に共感しない女性はいないのではないだろうか。資本主義社会とはなにか、という問いもまた投げかけられているような気がする。

おススメポイント

真野いずみ

稼いでも稼いでも満足できない主人公、少女たちが手にした現金が目の前にある高揚感、夜の街の、どんな小さなところにでもあるあやうさ。「オンナの値段」を読むと同じように最大限まで自分を切り売りする女性、ダブルワークをしてまでテーマごとの貯金をする女性、また小説の中に出てくる2000年前後の渋谷の情景やブルセラ・女子高生ブームの部分も書かれています。
2冊目を読むことによって小説を読んだ時のリアリティや臨場感が増すのではないでしょうか。

この記事を書いた人

真野いずみ

真野いずみ

読書好きのライター。小説、エッセイ、ノンフィクション、なんでも読みます。
関心があるのは舞台芸術・社会学。

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