一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 経済編(山崎圭一)のつぎに読む本

あらすじ

福岡県の高校教師。早稲田大学卒業。教え子から「もう一度先生の授業を受けたい!」という要望を受け,YouTubeで動画の配信を始める。たちまち全国の学生や教育関係者等の間で口コミが広がり話題となった。

一般的な教科書は,地域毎に区切ってを時系ごとに「タテ」につなげて解説しているが,本書はお金・経済を軸に「ヨコ」をつなげて解説している。この工夫によって「世界史」の書籍とは言いながら,経済編とタイトルにあるように、社会経済分野の解説本のようにも思えるほど。本書貨幣の概念が誕生した紀元前から今日までを10章に分けて解説している。

最初は、文明の発展がいち早く始まったヨーロッパ,中東,中国について。紀元前には既に貨幣が誕生し、貯蓄の概念が生まれた結果、貯蓄できる者とそうでない者の間に、貧富の差が生じ始める。

貨幣の使用はその便利さから次第に広がりつつあったが、大きな転換点となったのは「大航海時代」。それまで地中海,インド洋を中心とした海上航路は、アメリカ大陸、東アジアまで拡大する。世界各地で生産された商品が行き来するようになった。

ヨーロッパ諸国では、王は「絶対主義」といわれるような権威を維持するために、国をあげて金を稼ぐ仕組みづくりに乗り出す。国策として、商工業者の活動をある程度許容したり、「東インド会社」を設立した。

19世紀に入り、イギリスがいち早く産業革命を達成し、生産品のコストダウンが進むと、自国の産業を守れなくなるため,ある程度経済力のある国家がイギリスの後に続くための政策をとる。フランス、ベルギー、ドイツ、アメリカ、ロシアや日本などがあげられる。こうした近代化が成功した国家は、自国の商品を市場に流通させるため、植民地を確保するようになる。こうして、「生産・販売」を担当する先進国と、「市場」と「原材料」を担当する地域という分業化がすすんだ。

だが,「サライェボ事件」をきっかけに第一次世界大戦が勃発。敗戦国となったドイツは多額の賠償金を課せられ、やむを得ず、紙幣を増刷してしまい、ハイパーインフレーションが発生した。一方アメリカは、戦費がかさむ諸国に資金を貸付け、世界唯一の債権国に。アメリカ一人勝ちかと思いきや、ここで世界恐慌が起きる。

第二次世界対戦後は、冷戦の時代に。ソビエト連邦を中心とした社会主義国は経済発展が停滞していき、冷戦構造は終結した。

現代では、通信インフラの発展により、グローバル化が一層進む。世界的に経済発展を遂げるも、どこか一箇所で経済危機が起きると、深刻な経済危機が世界へ波及するようになる。

ろっく
ろっく

歴史は戦争や登場人物にフォーカスしがちであるが、本書のように,経済的視点から思考することで、なぜそのような出来事が起きたのかつながりがみえてくるので、理解もすすみやすい。

結局のところ、自国あるいはその地域の支配者は、困窮し経済が回らなくなると、増税して資金を確保するか、他国へ侵略して市場を確保し、自国の製品を流通させて資金を確保し、経済を回していこうとする。しかし、過度な増税を行ってしまうと、人々の反乱をおこして国家が衰退していくパターンはよくあり、国家の栄枯盛衰の典型的といえる。

近代に入ると先進国は、植民地を利用して安い労働力、原材料を活用し、自国で高付加価値の商品を生産し、植民地へ流通させる。結局何かを犠牲にしながら自身の利益を追求するというこのシンプルな仕組みは、太古から続いている。

歴史・経済に精通している方であれば本書は物足りないと感じるだろうが、経済や世界史の一から学びなおしたい方、中学生高学年や高校生でこれから勉強される方にはとても良い本と感じた。

次に読む本

お金の流れでわかる世界の歴史 (大村 大次郎)

本書もお金を軸にして歴史を紐解いている。著者が元国税調査官であり、その当時の出来事を経済的視点から解説しており、理解がすすみやすい。古代ローマ時代から、現代のリーマンショックまでを幅広く解説している。

恐らく、著者が言いたいのは「国の栄枯盛衰には一定のパターンがある。徴税がうまくいっている間は、富み栄え、やがて役人が腐敗していくと国家財政が傾く、それを立て直すために重税を課し、領民の不満が渦巻く」だと思う。

このパターンに陥って滅びてしまった、または経済発展から取り残された国々について、本書では数多く紹介されている。

ろっく
ろっく

共産主義の代表格である、ソビエト連邦が崩壊したのは「公平な経済ではなく、不公平な経済が原因」と主張している。掲げていた「平等な社会」という理想と現実には大きな乖離があったと考えさせられる。

ただ、共産主義国家の衰退により、資本主義こそが正解であると、世界的な共通理解すすんでしまったがために、現在は過度な競争を生んでいる。結果的に一部の富裕層はますます富を増やしていき、貧富の差がますます拡大していくのようになっている。資本主義にかわる新しい時代がいつの日かやってくるのだろうか。

ろっく
ろっく

「一度読んだら忘れない歴史の教科書」の10章では、「グローバルの本質は世界の一体化であり、豊かな人は貧しく、貧しい人は豊かになる。一方で、一部の富裕層は更に富を集める構造である。」とある。先進国である日本の成長が鈍いのは、まさにグローバル化の影響と言えるかもしれない。

上記について、解決策のヒントになりそうな記載があった。日本国民にとって住みやすい国になるには、「お金の流れでわかる世界の歴史」で紹介されているように「強い国は財政システム、徴税システムがしっかりと整っている。そして国が傾くのは、富裕層が特権を作って税金を逃れ、中間層以下にそのしわ寄せが行く時」とある。

歴史上の出来事には経済抜きでは語れないというのがよく示された2冊である。

この記事を書いた人

ろっく

西日本在住の30代事務職系サラリーマン(男)。電車に揺られながら読書している。土日は息子達(3人)とそのお友達の遊び要員として、家の周りを走り回っている。
 仕事では情報のアウトプットばかりでインプットする時間がなかなか持てないので,読書を決意。しかし,読んだ傍から忘れてしまうのが悲しい。
 作文はヘタだけど寄稿にチャレンジすることで自分の中でしっかり消化できるよう務めたい。よろしくお願いします。

  • ブックマーク

この記事を応援する

1日550円(消費税込)で、この記事をトップページで掲載し、目立たせることができます。広告費の一部は、レコメンド記事執筆報酬に割り当てられます。