あらすじ
近未来、ロボットのボッコちゃんがバーで客の相手をしています。
見た目は美しい女性のボッコちゃんですが、実は相手の言葉に対し、簡単な相槌を打つ程度のコミュニケーションスキルしかありません。
それでもその外見にひかれたお客はバーに次々とやってきます。バーのマスターはボッコちゃんが飲んだお酒を後で回収して、そのままお客に出すという仕組みで儲けています。
ところがある日、ボッコちゃんに恋をしてしまう青年が現れて…。
シンプルな設定と、意外な展開、そして不気味なオチ。ショートショートの名手、星新一の名作短編集。
短いストーリーの中で、びっくりするような結末を作り出すのが大得意の星新一。読者にただ驚きを与えるだけでなく、作品を読んだ後に残る物悲しいような余韻が印象的です。
表題作の「ボッコちゃん」ではロボットを利用しているようで、逆にロボットに翻弄される人の姿が書かれています。この短編集には表題作のような人間のおごりを逆手にとった皮肉な作品が多く収録されています。
次に読む本
『ボッコちゃん』で短編の鋭い切れ味にはまった人には、ロアルド・ダールの『あなたに似た人』がお勧めです。
あなたに似た人(ロアルド・ダール)
ロアルド・ダールは代表作に『チャーリーとチョコレート工場』など児童文学作家として有名ですが、奇妙な味の短編小説家というもう1つの顔も持っています。
『あなたに似た人』は不思議な読後感を残す短編が集められた本です。
例えば『南から来た男』。主人公の青年はひょんなことから知り合った不思議な老人と、ギャンブルをすることになります。ギャンブルに勝てば自動車をくれるという老人、しかし負けたときの代償は恐ろしいものでした。ギャンブル中に徐々に高まっていく緊張感にしびれます。
そして終盤。読者を「一安心」と思わせた後の、ぞっとするような最後の一文がたまりません。
SF風なシュチュエーションが多い星新一に比べ、日常的な風景からスタートするダールの短編という違いはありますが、シンプルなシチュエーションから急転直下するストーリー、そしてブラックなオチはどちらの作者にも共通しています。
星新一、ロアルド・ダールと続けて読んだあなたは、もう短編の魅力から逃れられなくなっているかも?!
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