あらすじ
幕末の長州藩を描いた小説で、主人公は吉田松陰と高杉晋作。
<吉田松陰の、貪欲かつ謙虚に勉強する生き方> 平等な社会の実現を目指して、東北から九州まで歩き回り、またどんな境遇の人からも積極的に学びを得た。さらに、松下村塾で教育するにあたっては、実際の世の中に役立つ学問として、また師ではなく同志として、個人の潜在能力を引き出すように教育し、維新の英雄を多数輩出した。
<高杉晋作の、クールに考えてホットに動く生き方> 禁門の変や外国艦船の砲撃で壊滅的な敗戦を喫した長州藩で、佐幕に転じた上層部と単純な攘夷・倒幕に狂乱し続ける藩民の板挟みになりながらも、「独立(割拠)し開港して富強な藩を作る」という第三の建設的な意志を貫き、クーデターを成功させ、維新回天の原動力となった。
次に読む本
花神 (司馬遼太郎)
同じく幕末の長州藩を描いた小説で、主人公は大村益次郎(村田蔵六)。
百姓出身で馬にも乗れないながら、医学・蘭学に裏打ちされた冷徹ともいえる合理主義をもって、軍艦の開発や近代軍隊の創設を行い、第二次長州征伐や上野戦争に勝利して、形骸化・無力化した武士の世を反転させてしまった。
現代を生きる我々にとっても、時代に即した合理的な思考・スキルの重要性を認識させられる。ただ、「暑いですね」と言われて「夏は暑いのが当たり前です」と答えるような四角四面なところも…。一方で、豆腐が大好物というエピソードや、シーボルトの娘イネとのロマンスにも注目。
幕末、外国に対する強い危機感を持って尊王攘夷を貫き、倒幕・維新を推進した長州藩。『世に棲む日日』と『花神』はともに長州藩を描いた物語で、この2話が同時並行的に歴史を走り抜けていました。
「時代の転換点には思想家・革命家・技術者が登場するが、いずれも新時代を見ることなく世を去ってしまう」と司馬遼太郎が述べていますが、吉田松陰・高杉晋作・大村益次郎がまさにその思想家・革命家・技術者です。
コメントを残す