『コーヒーの囚人』砂村かいりの次に読む本は

あらすじ

ある日突然出て行ったルームメイトの恋人と同居することになった主人公を描く「コーヒーの囚人」、箱入り娘として育てられ、恋愛経験がなかった主人公が上司との不倫に溺れる「隣のシーツは白い」、恋人の兄が障害を抱えていると知って結婚に踏み切れない女性を描く「どこかの喫煙所で会いましょう」など、人間関係に悩みを抱える人達を描いた5つの物語。それぞれの人生にコーヒーが寄り添う。

どの物語にも必ずコーヒーが登場するのだが、それはほっと癒してくれるものだったり、ほろ苦さを味わうものだったり様々で、何だか人生の難しさやもどかしさを表しているようだ。
特に印象深かったのは「どこかの喫煙所で会いましょう」。恋人の兄が障害を抱えていると知り、結婚を躊躇する有沙の気持ちが理解できなくもないし、それを知って気持ちが冷めていく彼氏の気持ちも分かる。しかし一番心に残ったのは有沙の浮気相手である寿のセリフ。
「人は誰しもリスクを背負って生きている」
「他人の持つリスクに排他的でいれば、それはいずれ己にも降りかかってくるものだ」
まさに、そのリスクに対応する努力をし続けることこそ人生なのだと思う。
順風満帆な人生などあり得ない。誰しも悩みを抱えており、正論だと分かっていても納得できなかったり受け入れられないことだってある。もやもやする思いを抱えながらも進んでいく人たちがよく描かれていた。

次に読む本

『マカン・マラン』古内一絵

「マカン・マラン」とはインドネシア語で夜食という意味だそうだ。
商店街の路地の奥でひっそりと営業している夜食カフェを訪れる人達と、生活に疲れた彼らを優しい食事とお茶、そして心に響く言葉で癒してくれる店主の物語。

何よりもマカン・マランのオーナーであるドラァグクイーンのシャールのキャラクターが魅力的。
この店を訪れる客は誰もが生活に疲れていたり、何かしらの悩みを抱えていたりする。それぞれの悩みに対してシャールは何かをしてくれるわけではないが、ただ話を聞いてくれる。体に優しい手料理を食べさせてもらうだけで、誰もが癒され、自分なりの解決策を見つけていく。
女性が働くことの大変さや、ドラァグクイーンになった人達の幼い頃からの葛藤なども描かれ、サラッと読める小説なのにずっしりと心に響く。心地よい感動を味わえ、優しい気持ちになれる。

おススメポイント

どちらも悩みを抱える人達の物語で、手料理とお茶、コーヒーが物語のスパイスとなっている。
疲れている時にコーヒーの香りや美味しい料理で満たされると、何だか自分の悩みが小さいことのように思えてくることがある。また明日から頑張ってみよう、と思える2冊。




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