あらすじ
時代は第二次世界大戦中。
ドイツ軍の侵攻で家族と故郷を失った少女が、ソ連軍の女性狙撃小隊に入り、厳しい訓練を経て仲間とともに戦乱へと身を投じていく物語です。
本屋大賞、アガサ・クリスティー賞大賞受賞作品。
基本的に、本屋大賞の作品は「ハズレなし」と思っております。
そんな中でも「同志少女よ、敵を撃て」は、数年に一度お目にかかれるか否かという「傑作」として強くおすすめしたい一冊です。
女性狙撃小隊のメンバーだけでなく、すべての登場人物が強く印象に残ります。
個々のキャラクター設定、見事です。
それこそ隊のみんなや仲間たちの顔が、読了後も脳裏に浮かぶほどに。
この物語はソビエト連邦という時代ですが、昔からロシア周辺は、戦争/紛争が絶えません。
戦争は一人ひとりの心を狂わせていくものだということが、要所要所で描写されています。
現在の社会情勢や、6月22日という日付を考えて、改めて注目されて欲しいテーマが生々しく描写されています。
これほど深いストーリーをしっかりと飽きさせずに読者に読ませてくれるとは、なんという構成力でしょうか。
作者の逢坂冬馬さんは、本書がデビュー作とのことですが、圧巻です。
次に読む本
戦場のコックたち(深緑 野分)
時代は「同志少女よ、敵を撃て」と同じく、第二次世界大戦中。
主人公は、アメリカ合衆国のとある師団に属する「コック兵」。
ヨーロッパに派遣され、戦場で生活するなかで遭遇したさまざまな事件を解決していくという、ミステリー小説です。
軍属のコックさんが主人公という小説は、初めて読みました。
少し考えてみれば、衛生兵と同じように、そういった職業は当然にして存在するのですが……
戦場におけるメニューや調理風景等、「なるほど!」と感心してしまう描写が数多く登場します。
しかしメインは、各章に登場する不思議な事件。
これをコックが解決していくのですが、戦争の残酷さが絡む事件だけではなく、戦禍でも幸せを願いながら生活する人の物語でもありました。
「同志少女よ、敵を撃て」と「戦場のコックたち」は、共に日本人作家による海外歴史小説です。
第二次世界大戦が題材となる小説を、ソ連(同志少女よ、敵を撃て)とアメリカ(戦場のコックたち)の兵士の立場から見ることができます。
海外ヒット小説の和訳版を読むと、文章のテンポや言い回しに独特のくどさを感じてしまうことが多々あります。
それが原因になり、読んでいて興ざめしたり、読了せずに終えてしまうことすらあります。
しかし、日本人作家が海外を舞台に、しかもその国の人物をメインに活躍させる小説を描ききるのは、容易なことではありません。
どちらの作品も、読んでいてリアリティを感じられつつも、文章はノーストレス。
このような作品は貴重な存在です。
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