あらすじ
亡くなった親から不動産を譲り受けた康之は、恋人の沙織とともに、失踪した賃借人・海原の行方を追う。2人はやがて、周囲を岩壁に囲まれた閉ざされた場所へとたどり着いた。そこで探索を始めた2人だったが、突如現れた6人の住民に捕らえられてしまう。脱出するために与えられた条件は、6人のうち誰か1人を殺すことだった。

外界への往来が絶たれた、いわゆるクローズド・サークルものの作品です。私は閉ざされた空間で事件が起こるようなシチュエーションが好きなので、設定を知った時点ではかなり面白そうだと期待していました。しかし、本作は外界から隔絶されているとはいえ、舞台となる場所はそれなりに広く、敷地内には家もあります。食料も十分にあり、敷地内を自由に歩き回ることもできます。そのため、「外に出られない」という状況のわりに、登場人物の焦りや葛藤があまり伝わってこず、読んでいてもそれほど緊張感がありませんでした。最後のどんでん返しも、個人的にはそれほど大きな衝撃を受ける展開ではなく、期待していたほどの満足感は得られなかったです。
次に読む本
方舟(夕木春央)
大学時代の友人たちと山奥にある謎の地下建築を訪れた一行。そこで一夜を過ごすことになった彼らだったが、突然の地震によって出入口が塞がれ、外に出られなくなってしまう。水や食料も限られる極限状態の中、殺人事件が発生。疑心暗鬼に陥りながら、犯人探しを進めていくが…。

さっきも言った通り、私はどこかに閉じ込められるシチュエーションが大好きです。地下建築で殺人が起こり、犯人が野放しになっているのに逃げられない状況は、常に緊張感があり、最後までハラハラしながら読み進められました。そして、なんといっても印象に残ったのが、最後のどんでん返しです。まったく予想していなかった展開だったので、まさに天地がひっくり返るような衝撃を受けました。読み終わった後もしばらく頭から離れない、非常に満足度の高い作品です。
おススメポイント

今回紹介した『楽園』と『方舟』は、どちらも夕木春央さんによるクローズド・サークル作品です。『楽園』は外界から隔絶された環境が舞台ですが、周囲を岩壁に囲まれているとはいえ、ある程度自由に行動でき、太陽の光も届きます。そのため、閉じ込められているとはいえ、そこまで強い閉塞感はありません。一方、『方舟』は太陽の光さえ届かない地下に閉じ込められ、行動できる範囲も限られています。逃げ場のない状況に加えて、犯人が誰なのかわからないという恐怖もあるため、常に緊張感を味わいながら読み進められます。そのため、『楽園』を読んで「思ったより緊張感がなかった」「刺激が足りない」と感じた人は、ぜひ『方舟』を読んでみてほしいです。
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