あらすじ
同じロースクールに通っていた3人。学生時代学内で行っていた「無辜ゲーム」と現実の法廷が繋がり、3人はそれぞれ被害者、加害者、弁護士となる。白か黒か
有罪か無罪か。そしてその先に何があるのか。
主人公が弁護士か検察側かによって、話はどちらかの「正義」に偏りがちになるものだが、
「法廷遊戯」は結果的にどちらでもなかった。
“犯した罪は償わなければならない”
という硬い信念に基づいていた。
途中、不可解な箇所もあった。
弁護士を主体にしているからかもしれないが、検察の捜査が不十分な気もした。
だが、だからこそという結末がしっかり用意されている。
最後に主人公がたどり着いた事実と選択は、
弁護士として身を置く著書の「正義の道」なのだと感じた。
次に読む本
「イノセントデイズ」著者:早見和真
田中幸乃は30歳を刑務所で迎えた。
彼女は元恋人の妻と一歳になる双子の放火殺人の罪で死刑を宣告されていた。
田中幸乃はどんな生い立ちを辿ってきたのか。
子供時代、中学時代、そして大人になったこれまで彼女と接点があった者たちの証言から真相を探っていく。
人は誰からも必要とされない孤独を乗り越えることができないのかもしれない。
自分の中に誰かに必要とされるような価値がないと確信してしまった時、崩壊するのかもしれない。
田中幸乃は崩壊しており、死刑に反論もせず寧ろ死刑の宣告を望んでいた。
彼女は本当に悪女なのだろうか。
彼女を知る人々の煮え切らない証言。
皆自分や自分の大切な物を守る為に、
側にいた幸乃を傷つけた。
皆どうする術をも持っていなかった。
その結果幸乃は死刑を望むことになる。
人間の弱さ、脆さ、頼りなさを感じさせてくれる作品。
おススメポイント
判決が確定していくまでを、ゲームと現実を見事に組み合わせ構成した「法廷遊戯」
と、死刑が宣告され、「悪女」に仕立てられた女の人物像を明らかにしていく「イノセントデイズ」は両者ともに「法」に纏わるミステリーだ。
「法」に関している以上、白か黒か明確にしなければならないが、「グレー」である時の難しさ、苦しさ、切なさを全く異なる手法で表現しており、
似てはいるが全く非なる物でもあると感じた。
両者ともに「人間み」を感じる良書だと思う。
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