敗者のゲーム(チャールズ・エリス著)

あらすじ

今や投資における90%以上の取引がプロの機関投資家に行われるようになっている。この環境下で、個人投資家が市場全体を出し抜いて長期で安定的に稼ぐことはほぼ不可能であることを様々なデータを使って教えてくれているのが本書だ。
インデックス・ファンドを買って保有し続け、余計な手数料や運用コストと高い税金を避けて経済全体の成長を待ち、できるだけミスを少なくしていくことが最良の投資法なのだ。
長期にわたって確実なリターンを得るために必要なのは、タイミングをはかって適切なものをつかもうとする夢を追うのでなく、①株式・債権・不動産などへの長期的な資産配分の決定、②人生の中でいつ資金が必要になるのかの見極め、③突然の暴落に備えた、値動きの異なる資産クラスへの幅広い分散投資、④そしてこれらの決めたことを一貫して忍耐強く実行していくことなのだ。

そら丸
そら丸

2022年11月に策定された政府による資産倍増プラン、2023年3年の東京証券取引所から上場企業へのPBR改善要請とその後の日経平均株価の上昇、そして2024年1月からの新NISAの運用開始などを受け、日本人の投資への関心も以前よりは高まってきています。
しかし、これまで日本では家庭、学校、企業のいずれにおいても資産形成の教育はほとんど行われていなく、個人に委ねられてきた状況です。その結果、日本人の金融リテラシーは先進国の中で下位に留まっています。
給与が30年間低空飛行を続ける中、社会保険料の増額と増税、物価高と、ますます庶民の生活は苦しくなってきており、今後ますます資産形成のスキルが求められます。まずは本書を読めば、しっかりとした投資の考え方の土台を築き、SNSやメディア上で飛び交う怪しげな投資情報に惑わされないマインドを形成できるでしょう。

次に読む本

ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集(石角完爾 著)

ユダヤ人がホロコーストに代表されるような悲劇の歴史の中で困難を切り抜け、現在まで生き延びてきた背景にタルムードの存在が大きいという。タルムードとは、古代ヘブライ語で研究・学習を意味する言葉で、日常生活の慣習から医学、紛争解決に至るまで様々な規範と関連する議論を記した世界最古の議論集だ。ユダヤ人が議論好きで多角的に物事を俯瞰できるのは、幼い頃からこの知恵の宝庫を学び、考えて実践してきたからだと言われる。
本書はこうしたタルムードの中から、「お金」「ビジネス」「人生における苦難」という3つのテーマに沿った多数の説話が紹介されている。ここからわれわれは、仕事や生活でふりかかる様々な困難を予め想定し、適切に対処していくために必要な本質的な視座を得られるはずだ。

そら丸
そら丸

Facebook(現Meta)創業者のマーク・ザッカーバーグ氏やGoogle創業者のラリー・ペイジ氏など、現代のハイテク業界のトップ企業経営者には多くのユダヤ人が存在します。世界人口に占めるユダヤ人の割合からすると明らかに多く、そこにはユダヤ人としての特性が寄与している可能性が高いといえますね。
第一章の「お金を引き寄せるユダヤ哲学」では、ユダヤ人の格言として人を傷つけるものには悩み、諍い、空の財布があり、このうち空の財布が最も人を傷つけることが紹介されています。これは貧しいことは悪だから強欲になれということでなく、お金を冷静に捉え、人生における扉を開ける大切な鍵というユダヤ人の認識を示すものです。日本人にはお金を汚いものと捉えてしまう考え方が刷り込まれていますが、もう少し冷静かつ賢いお金との付き合い方が必要に思えます。先進国の中で最も貧しい水準にまで落ち込んでしまったこの生活環境を打開していくためにも、マネーリテラシーを高めていく必要があるのでしょうね。

おススメポイント

そら丸
そら丸

投資に限らず、お金とは一生上手く付き合っていく必要があります。今回紹介した2冊は、このお金との付き合い方につき、具体的な投資手法の観点とより普遍的な捉え方について学べる2冊といえます。
ユダヤ人にはお金に対して5つの心構えがあるといいます。それは身の丈に合った報酬と適正な生活、日々の勉強による自己規制、誘惑に負けない自己抑制、しっかりとした自己管理、そして嘘をつかない正直さという5項目です。これらはすべて投資活動においても大事なスタンスといえます。多くの投資初心者はこれに反して、深く経済を勉強しないまま(自己規制の欠如)、楽して大金を掴もうとして(非適正)、明確な投資方針がないまま売買をして(自己抑制のなさ)余計なコストを支払い、詐欺師(正直さの欠如)の甘い囁きに騙されてしまいがちなのです(自己管理のなさ)。




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