あらすじ
大学2年の工藤泉は高校時代に微かに想いを寄せていた演劇部の顧問・葉山貴司からの電話がきっかけで、同級生や後輩と演劇の練習に加わることに。彼らと過ごすうちに、友情や懐かしさとは違う別の感情が泉に湧き上がる。それは、同級生の1人である小野怜二へのあたたかなやさしさと、高校時代に仄かな想いを寄せていた葉山への確かな恋心だった。友情なのか、恋心なのか、はたまたどちらにも当てはまらない想いなのか。今と過去の恋心が交差した末路を、美しい日本語で導き出す。「身体がこわれるほど、あなたを愛しました」。作者渾身の恋愛小説、誕生。
10代から20代の恋愛は、1つ1つが蜂蜜のように濃密で深い味がする気がします。
咲くときの勢いと散るときの儚さとの対比があまりにも美しくて、より輝きを増すという印象です。
初恋の想いが強ければ強いほどその記憶は鮮明に残ると言われていますが、恋愛感情の「好き」にも段階があるのだと、彼女の文章で知ることができました。島本理生さんの作品を読んでいない方には少し難しく感じるかもしれませんが、大学生の話なので自分の大学時代と重ねてみるのもおすすめです。
次に読む本
2020年の恋人たち 島本理生
母の突然死がきっかけで、彼女が経営していたワインバーを継ぐことになった32歳の前原葵。
突然のことに戸惑いつつも、常連客や新しく入ったアルバイトの後輩、試飲会で知り合った店主やスナックのママたちと交流を取っていく。その一方で付き合っていた恋人との関係を断ち切る。ヒトと料理とワインが紡ぐ複雑な人間模様を、滑らかで流暢な文章で紡いでいく。32歳のアラサー女性、コロナが変えた人の心、そして最後に前原葵という人間が選択したものとは。コロナ時代を生き抜こうと闘う1人の女性が送る、選択の物語。
30代に突入した前原葵は、落ち着いてはいるものの少し無機質な印象を受けましたが、徐々にその表情が綻んでいく過程が楽しめて、自分もそうなるのだろうかとイメージしてしまいました。アラサー時代は勢いが落ち着き結婚適齢期と言われていますが、それはあくまでも現実の話。前原葵は様々な性格や人となりと交流することで、自分に必要なモノ、そして不必要なモノを選択していきます。選択とは、片方を選びもう片方を捨てるという行為です。30代の魔力が前原葵に掛かったような印象を受けました。
島本理生さんの恋愛小説は、言葉にできない想いを言語化してスッキリさせてくれる印象があります。
恋愛や人生には明確な答えや正解がない分、自分で考えて悩むことが必要です。
10代、20代、30代という3つの世代が送る恋愛物語で、あなたにもどこか引っかかるところや違和感を覚えるはず。
その違和感を大切に抱きしめていけば、生きる活力となるという強いメッセージを最後には与えてくれますよ。
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