あらすじ
吾輩は猫である。名前はまだ無い。英語教師・珍野苦沙弥(ちんのくしゃみ)の家に住み着いた猫が、苦沙弥たちの人間模様、明治の日本社会を風刺する。鋭い観察眼と独特の語り口をもった頭脳派な一方、義理堅い行動派なところあり、なかなか魅力的な猫である。
「金儲けは、義理をかく、人情をかく、恥をかくの三角術」など、現代にも通じる警句がちりばめられてハッとさせられるところもあり、古臭さを感じさせない。
次に読む本
とりつくしま (東直子)
未練を残して死んでしまった人の前に現れる「とりつくしま係」。何かの物にとりついてこの世に戻ることができるという。マグカップ、リップスティック、名札。それぞれの物にとりついた人が、愛する人を見守る様子を描いた短編集。
特に、母が息子のロージン(野球の投手が使う滑り止めの粉末)にとりついた『ロージン』が、そんな物にとりつくのかという斬新さと、粉末のためだんだん減って消えていく儚さがあって印象深い。
犬
『吾輩は猫である』は猫の視点で描いた小説で、明治ではさぞかし斬新だったのだろうと思います。『とりつくしま』は物の視点で描いた小説で、こちらも斬新に感じるところがありました。ふだん自分が、動物や物からどう見られているか想像するのも面白いですね。
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