『告白』湊かなえの次に読む本

あらすじ

市立S中学校1年B組の担任、森口悠子は生徒達に告白する。自身がまもなく教師を辞めること、数ヶ月前に亡くなった愛娘の愛美はここの生徒に殺されたと分かったこと、犯人の少年A・Bにはすでに復讐を遂行したことを。 そうして森口が去り、2年生に進級した生徒達と周囲の大人が、少年A・Bを中心とした事件の様子を様々な角度から追っていく。

にゃんこくらげ
にゃんこくらげ

センセーショナルでインパクトの強い作品でした。 語り手が変わることで人への印象が変わる様が巧みだし、事件の原因となった人々の身勝手さ、残酷なまでに罪を弾劾する姿がとにかく徹底的に描かれています。 それに加えて教師が生徒に復讐を行うという設定を使ったのが秀逸。 友人でも上司部下でもお近所さんでもママ友でもなく、教師から生徒。特に第一話の主人公である森口悠子は、普段から生徒を馬鹿にもしなければ過大評価もしない教師でした。その幼稚性を承知し、本来なら子どもが間違いを犯した際には叱り導くはずの立場である人間が、最も残酷な手段で敢行した復讐。 微に入り細をうがって復讐する様子は描かれていませんが、真っ黒な心模様が滲み出ておりそれが読み手まで侵食するような作品でした。

次に読む本

『弁護側の証人』小泉喜美子

元ストリッパーの”ミミイ・ローイ”こと漣子は、八島財閥の放蕩息子杉彦に見初められ、大恋愛の末に結婚する。 杉彦の親族や女中達からは歓迎されず嫌がらせを受ける漣子だが、持ち前の明るさと杉彦への愛で乗り切ろうと奮闘する。 ところが義父が何者かに殺され、夫婦は離れ離れになってしまう。金網越し悲しげな表情で諦めかける杉彦に、諦めるのは早いと言う漣子。 彼女は果たして真実を見つけられたのか…?!

にゃんこくらげ
にゃんこくらげ

ちょっと古めかしい言い回しもあるけど、現代では出せない味があって私は好みでした。 驚きの結末もですが、登場人物達が魅力的でシリーズだったら読みたい程。 主人公ミミイ・ローイは応援したくなる。教養は足りないかもしれないけど、一生懸命でスレてないんですね。元ストリッパーとのギャップが良い。 あと元同僚のエダに、彼女が連れてきた清家弁護士。個性豊かな彼らが物語に良いアクセントをつけてくれます。惜しいのは、そんなにキャラが立っているのにちょっと出番が少なかったこと。 サラッと書いたけど、結末にはまんまとしてやられました!途中で感じた違和感を、なぜスルーしてしまったのか… 面白い小説は、年数が経っても面白い。賛否もあるようですが、私は叙述トリックのレベルが高いと思いました。

にゃんこくらげ
にゃんこくらげ

人に対する印象は、その人の一面でしかないとはよく言われますが、見事に体現した物語を2つ選びました。どちらも、第一話で見えていた人物像と最後に浮き彫りになった印象はガラリと変わるでしょう。




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