あらすじ
とある事情で留年し、二度目の高校三年生を迎えた佐藤晃。深い絶望と孤独。底知れぬ喪失感の中、虚しい日々を過ごしていた彼だったが、不思議なことにその周囲には変わり者ばかりが集まる。いつしか自分の居場所を見出していく中で、傷ついた彼の心は次第に回復を遂げていく。
タイトルを見るとちょっとびっくりしてしまいますが、これはアメリカのロックバンド「ニルヴァーナ(Nirvana)」で、ボーカル&ギタリストを担当していたカート・コバーン(Kurt Cobain)の言葉です。
かけがえの無い大切な存在を失ったあと、人はどのようにして生きていけばいいのか。生まれて初めての彼女に、病気で先立たれた少年の魂の彷徨が描かれます。青春小説であり、音楽小説。そして最高の恋愛小説です。 自分の死後に佐藤がどれほど苦しむか。それを予見した上での死にゆく彼女の隠れた献身が強い感動を誘う一作です。
次に読む本
君の膵臓をたべたい(住野よる)
「共病文庫」と書かれた日記帳を拾った主人公。それはクラスメイトの山内桜良が、余命僅かな自身の心情を綴ったものだった。孤独を愛する主人公と、クラスの人気者の桜良。対照的な性格の二人は、秘密を共有したことで、次第に心の距離を縮めていく。しかし夢のような日々にもいつしか終わりはやって来る……。
もはや説明の必要もないくらいの、2010年代を代表するサナトリウム文学の大ヒット作です。実写映画化、アニメ映画化もされた名作です。 とても不思議なタイトル名ですが、終盤に明かされるその意味に涙した読者は多いはず。 孤独な人生を送る主人公の「その後」を心配する桜良。彼女が「共病文庫」の一番最後に残した言葉が読み手の心を揺さぶります。
ちょっと不思議なタイトルの恋愛小説。というのがまず一つ目の共通点。 (ネタバレ) そして、もう一つの共通点は、死してなお、遺されたものを「生かそう」とするヒロインの想いです。 『君の膵臓をたべたい』では、桜良は孤独に生きる主人公に、自分以外の他者とも繋がることを求めます。 他者とのコミュニケーションが苦手だった主人公が、ラストシーンで恭子と桜良の墓参りに行けるようになるまで、どれほどの苦労を重ねたかと思うと熱い思いがこみ上げてきてます。 一方で、『処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな』は、 ヒロインが死んでから、主人公が立ち直るまでの期間をメインに据えた物語です。 こちらでも、主人公のために砂羽は、膨大な手紙を残してこの世を去ります。 砂羽の心情の多くは語られませんが、その深い想いが最後の最後に主人公に伝わる瞬間、 読み手に取っても大きなカタルシスとなって残ります。
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