あらすじ
もともと、母を幼いうちになくして、父が再婚したところから始まるストーリーなのです。しかし、本の始まりは、女子高生の日常から。少しずつ、一人の少女の”明らかに違う”日常が明らかになっていくという話の流れでストーリーは動いていきます。実の父親の再婚から、その父との別れをきっかけにして、いろんなタイプの育ての親とのエピソードが、”普通”と言われる生活を送っている友達をつうじて”あたりまえ”という言葉のあいまいさを感じる作品です。
話の展開の仕方がとても、心地よかったです。女子高生の学校生活の場面から、突然、小学校時代の継母とのエピソードが入ってきたり、その全部をかたらないまま、また、今の生活に戻った話になり、また。過去のエピソードがはじまる。そんな、小出しに彼女の全体像が見えてくる話の展開は、案外、違和感なく受け入れられた自分にも新発見でした。話の内容も、”血のつながり”とは、甘えなのではと考えさせられることが多い、ストーリーでも、楽しませてくれる作品でした。
次に読む本
「とんび」(重松清)
無骨で、言葉足らずで口より手が早い、気持ちをまっすく表現する、実の親を知らない男の子育てのストーリーです。和尚さん、飲み屋の女将さんを筆頭に、温かい周りの人に”普通に”支えられて育った男が、優しい女性と出会い、子供を育み楽しい生活が始まると思いきや、まさかの事故で大好きな奥さんをなくして、子育てに奮闘し、その子供が成長して成人するストーリー。
今までで、一番本で泣いた一冊です。絵にかいたような不器用な男の日常が、手に取るように描かれていて、その男の苦労、不安、後悔も、子供を持つ父親になった自分には、ぐっと心に刺さる作品でした。困ったときに男が頼る和尚さんの言葉にも泣かせれました。母親のいない親父の苦悩を、親の当たり前の愛情のかたちを知らずに育った男の”親とは”を模索する姿勢、自分に投影して、見つめなおすには最高の作品です。
最初の課題本を読んでいて、この「とんび」の日常をなぜか思い出したことから、この本を紹介します。40代以降の方ならだれでも知ってるベストセラーですが、若い人にはもしかして読まれてないかもと思い紹介に至ります。楽しそうな、日常の風景が描かれつつ、人のぬくもりを感じる作品。親とは、”血のつながり”の意味って、親だから”普通”、他人だから当たり前、子供だから当たり前、”当たり前”や”普通”を考え直す機会をもらえる点でも共通するものがあります。この本もないものに目を向けるのではなく、あるものに感謝して生きていける、前向きにさせてくれる本です。
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