あらすじ
神経学者による、ヒトの目が持つ超人的能力についての大胆な仮説と説得力のある裏付けを示した本です。この本によれば、ヒトの目には、 ①テレパシー 、②透視、③未来予知、④霊読という進化の果てに獲得した超人的な能力があるといいます。これらの能力の正体は、私たちが普段気にも留めず普通に使っているものであるそうです。どういうことでしょうか?その理由は以下の通りです。
①テレパシー(色覚)色覚は、相手の肌の色(特に顔色)を見て他者の感情や体調の良し悪しを読み取るように発達した。
②透視(両眼視)例えば顔の前に指を近付けてみるとその指が透け見える。このような顔の前側についた2つの目で見ることによる能力は、草や葉の多い密林で獲物を追いかけたり敵から逃げるのに役立つ。
③未来予知(動体視力)目で見たものが脳で知覚されるまでには約0.1秒かかる。そこで脳は現実でなく、少し先のあるべき未来をつくりだして僕らに見せている。私たちが見ているのは、ありのままの現実でなく、脳がつくり出した予感である。
④霊読 (物体認識)私たちは死者とコミュニケーションをとることができる。文字などを認識しそれを読むことによってだ。人類史おいて文字ができたのは比較的最近なのに、人はまるで文字を読めるように進化したように思える。でも実は逆であり、目は木などの自然界にある物体を認識しやすいように進化した。そして記号や文字のほうが自然界の物体に似るように進化したのだ。
次に読む本
『盲目の時計職人』(リチャード・ドーキンス)
現代の進化論を巧みなアナロジーで説明する進化の伝道師、リチャード・ドーキンスによる進化論に対するありがちな誤解を解いた本です。生物は複雑な構造をもつことから、さも目的をもってデザインされたかのように誤解されがちです。しかし生物の進化は、「盲目の時計職人」のように手探りで自然淘汰がなされた結果であるとこの本では説明します。
目は生物がもつ複雑な器官の代表的なものです。水晶体や網膜の構造が少しでも違っていたら、私たちの目は今のようには見えないでしょう。ここで以下のような疑問が生じます。進化のプロセスは非常にゆっくりとした変化の連続なので、水晶体が網膜などが今のようになるまでは、生物は長い間見えない目を持っていたことになります。例えば、5パーセントしかない目を持った生物が生存できたのでしょうか?
しかし、これは進化論の反対派がよく陥りがちな間違いだとドーキンスは言います。
仮に5パーセントしかない目であっても、何らかの光を感知できるのであれば全く見えないよりはましと言えます。従って、その特性は生存に有利に働き、その個体は子孫を残しやすくなります。この例ように、進化は非常にゆっくりとした変化の連続ですが、その果てに目のような複雑な器官をつくることができるのだと説明しています。
『ヒトの目、驚異の進化』は、ヒトの目がもつ4つの能力が進化論の観点から大胆な仮説で説明され、それぞれについて説得力のある実証がされていました。読み物もしても面白く、また、「目がどのように進化したのか」など、更に興味が広がる本でした。
『盲目の時計職人』は、そもそも生物の進化がどのようなものであるかを丁寧に説明した本です。
進化論は、ヒトをはじめ生物がどのようにしてできたかを明らかにする強力な理論ですが、誤解が多く正しく理解するのが難しいものでもあります。この本でも言及されていますが、目のような複雑な器官については、特にその傾向が顕著になります。
『盲目の時計職人』は、リチャード・ドーキンスの有名な著作である『利己的な遺伝子』よりも踏み込んだ内容の本です。その為やや難しい内容になっていますが、例えば目の進化といったピンポイントの進化のプロセスについて詳しく説明されています。
目がどのように進化したのかが更に深く知りたくなった人におすすめの本です。
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