あらすじ
P&GやUSJでマーケターとして活躍した著者が、就活を控えた娘に伝える書簡として書いた本。
資本主義のしくみやキャリア戦略、セルフブランディングといった、マーケターらしい理論的な章も興味深いが、やはり出色なのは、本のタイトルにもなっている「苦しかったときの話をしようか」の章。
例えば、会社幹部の肝煎りプロジェクトとして始動したものの、コンセプトや戦略がいっさいない、社内でも誰も成功すると思っていない1本1980円もするヘアケア商品を担当させられたときの話。自分でも信じられないものを人に信じさせる苦悩、結果大失敗だった惨めさ、そこから得た気づき。これらがリアルに書かれている章が印象深い。
次に読む本
ビジネスマンの父より息子への30通の手紙(キングスレイ・ウォード)
カナダの実業家が、大病をきっかけに息子に、学生時代から自分の会社を譲るまでの20年間にわたって書き続けた手紙。
マナーと道徳を身に着けて誠実に、自信を持ちつつも相手に敬意を払う。目標を決めたら、最大限の情報を集めて準備する時間と努力を惜しまない。読書して他人の経験・過ちから学ぶ。趣味や休息も大事にし、バランスを心掛ける。
基本的・常識的なことばかりだが、だからこそビジネスマン、そして人間として大事にすべき原理原則を伝えた手紙である。また、それぞれの手紙は、差出人の名義が「君の応援団長より」「カヌーの相棒より」と違っていて、最後の手紙が「父さんより」となっているところに、父親の威厳や愛情の深さが感じられる。
『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』は30年以上前に出版された本ですが、現在も刷を重ねて書店に並ぶロングセラーであり、私が学生時代に読んだときは礼儀と努力が大切なんだなと学びましたが、社会人となって13年たった今でもその教えが息づいています。
2冊とも、ビジネスマンの父が子にあてた手紙という形式ですが、親が子に伝えたいことというのは、長い経験で得た仕事や人生のエッセンスです。それを覗き見するような、不思議な読書体験が味わえます。あなたは自分の子に、あるいは次の世代に、どんなことを伝えたいですか?
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