あらすじ
「卒業」にまつわる4編から成る短編集。短編、とは言っても、一つ一つがずっしりとしていて、かなり読み応えのある1冊になっている。 家族との蟠りから、失ったものへ想いから、それらに捕らわれる自分自身から…いろいろな「卒業」が、実直に、人間臭く、描かれている。
お風呂で本を読むのが好きな私。気付けば、涙をボロボロと湯船に落としながら、読んでいた。こんなにもドラマティックなのに、誰にでも、起こり得る、リアルさ。それを「卒業」できる強さ。希望。許されるなら、わあわあ泣いてしまいたいほど。こんなにも心が揺さぶられる本も、なかなか無い。
次に読む本
『卒業』を読んで、一編の話を思い出した。瀬尾まいこの『おしまいのデート』の中に収録されている「ランクアップ丼」というお話。教師時代の思い出が、2冊の本を繋いでくれた。
おしまいのデート(瀬尾まいこ)
「デート」をテーマにした短編集。 デートとは、何だろう。大事な人と会うこと。向き合って時間を過ごすこと。 じいちゃんと孫、元不良と教師、同級生、バツイチOLと大学生、園児と保育士… 恋人同士だけではない、いろんな「デート」での出来事が、鮮やかに、あったかく、描かれている。
瀬尾まいこさん作品は、登場人物がすごく魅力的。女性らしい細やかな心の動きの描写や、キュンとしちゃう言葉。読むだけで心が満たされてしまいます。
どちらの本も、学校が舞台の中心というわけではないのだけれど、ふとした瞬間に、学校での一コマが、先生の言葉ひとつが、素晴らしく、または苦しく、胸に迫って来る。 教師を辞めた身としては、『卒業』に収録されている「あおげば尊し」、『おしまいのデート』の「ランクアップ丼」を読むと、自分がもし教師として一生を全うしていたら…と、思いを巡らせずにはいられない。 自分らしく生きる、ということを考えさせられる2冊。
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