あらすじ
読んで字のごとく、自分の意見のつくり方を教えてくれる一冊です。
日本社会で生きるなか、大半の人があまり意見を求められない環境で大人になります。でも意見を求められる場面は突然やってくる‥。さあピンチ!意見の作り方がわからない、他の人と似た意見しか思い浮かばない、どうしたらいいの?
フランスへ留学して哲学を学び、現在は哲学講師として働く著者。フランス人は意見の違いを面白がる民族。年齢性別に関係なく答えのない議論を交わすことが日常の当たり前の光景です。
一方調和を大切にする日本人は、自分の言葉で意見を言うことに慣れていません。普段から考えなくても生きていけるので、考えることを放棄しがちです。
そんな環境であって物事を多角的に分析できる力を鍛えると、建設的な議論ができたり、乱暴な議論に押しつぶされず正しい反論もできるようになります。
自分の独自の考えを持てないことがコンプレックスだった著者が、意見大国・フランスに渡って得たメソッドとは「問いを立てる、言葉を定義する、物事を疑う、考えを深める」ことから「答えを出す」こと。
実体験や練習問題を交えながら、考えの組み立て方をわかりやすくレクチャーしてくれています。
本書を読むメリットは、メソッドを実行することで情報の波に呑まれずしっかり自分の足で立っていられるようになることです。私自身も最初は難しく感じましたが、物事を多角的に見る意識をすることで確実に世界の見え方が変わった実感がありました。人を間違ったロジックで騙そうとしたり、意図的にこちらの意思を煽動するような巧みな人がいても、立ち止まって分析する癖があれば問題なく通過できるでしょう。
また、目の前にあるものをそのまま受け入れるのではなく、立ち位置を変えて見つめることで見えなかった側面(メリット、デメリット、新たな可能性やチャンスなど)に気づくこともできるはずです。思考と行動をセットにするため、実行に移せる舞台の準備もお忘れなく。
それにしても、人間の脳はサボるようにできているとはいいますが、問いを立てるのに10個。一つの言葉を定義するのに何通りかの意味の中から定義づけたり、反意語から定義づけたり‥。サボっていた「考えること」を復活させようとしたら、一つのメソッド実行にもこんなに考えなきゃいけないなことがあるなんて。徐々に慣れてくるとは思えど、自分の意見を持つことは本当に楽ではないのだと実感しました。でも効果は抜群で、実行できるようになれば周りと差別化が図れるのだろうと思います。
時々イラストも交えてとてもわかりやすく書かれていました。おそらく中学生以上なら読みこなせるし、今後の人生に有益なのではないかと思います。子どもにもおすすめします。
次に読む本
断る力/勝間和代
断る力とは、「自分自身で多角的に物事を分析し、自分の意見を持ち、必要じゃないものを排除して自分のためにリソースを使うための力。その環境を作るための人間関係の作り方を本書では主に解説してくれています。
私たちは自分を押し通すと嫌われるのではないかという不安を持ちがちです。しかしその正体を紐解いていくと、意外と脅威は少ないことがわかります。
相手の立場を尊重し、理解し、自分の立場をハッキリさせた上で断る。断ることで相手がかえってこちらに好感を抱くような、より高次な提案ができることが正しい断る力なのです。断る力を正しく使えば嫌われることは最小限に抑えられます。
そもそも断らなくても良いように、自分の中の許容範囲をどこにするか。最大限こちらが気を遣っても嫌われてしまった場合は、要因を分析した上で労力やコストを使ってまで解決しなければならないのか、適切に反撃を加える場合とその方法は何にするのか。
本書には断る力を取りまく人間関係について、著者の経験を交えつつ考えられる様々なケースが挙げられています。より生産性のある人間関係の構築と、断る力を発揮させて生み出すべき生産物(自分の思い描く人生)をレクチャーしてくれている本です。
断る力には自分軸が必要で、相応の知識を持ち多角的に考えることが欠かせません。大変なことではありますが、それは練習で鍛えられるので誰でもできることでもあります。断ったなかで積み上げる実績も、後々必要になってきます。
そこを乗り越えてサイクルを回しだすと、人生が大きく変わることを提唱してくれている本です。
断る力を持てば自分主体の人生を送ることができ、自己肯定感が上がります。
私自身、人生を流されるように生きてきたと感じていました。その正体は、周りの同調思考に飲み込まれて自分の頭で考えることをしてこなかったのだと気づきました。特に、選択肢のない閉鎖的な環境に身を置いている時に思考停止が起きやすくなります。ともすればその環境に落ちやすいので、今後は積極的に避けていくよう心がけたいです。
「万人から好かれようとしなくて良い」とは言われても、そう簡単にはいきません。相手の都合の良い主張に、意図せず従ってしまうこともあります。それは嫌われるのが怖いというよりも、嫌われることについての理解不足だったと言い換えられそうです。嫌われる要因、放っておくべきこと、そもそも嫌われたらどんなデメリットがあるのか、反撃しなくてはいけないシーン、その際に何が必要なのかなど。「相手が自分を嫌う以上、自分だけに問題があるわけではない」、著者のこの主張は的確です。
人生の鍵を握るのは、やはり良好な人間関係なのだと感じました。本書でも、断る力の効果と絡めて人間関係に多くのページが割かれています。他者との関わりの中でのすり減りを最小化し、最大限自分の人生の舵を取れることが最終的な着地点であることを改めて実感しました。
おススメポイント
「『自分の意見』ってどうつくるの?」では自分の意見を作って議論ができるようになり、「断る力」ではその意見をもって相手と対等な関係を築き、良好な人間関係と自分主体の人生の両立を目指す一連の流れができるのがこの2冊の関係です。2冊読んだらやっと道筋ができると考えて、選定しました。
私自身が会議で自分の考えを発言できないことが多く、「あの意見もいいし、この意見もいい」と他人の意見すら吟味できなかったことがコンプレックスでした。色々な角度から一つのことを見たくても、着眼点がわからなかったのです。意見を交わそうにも一方向からの脆弱な意見ではちゃんとした議論ができず、釈然としないながらも流れに身をまかせてきた過去があります。
●対等な人間関係を築きたい
●自分の意見や独自の考え方を持ちたい
●他者と関わりながらも、もっと主体的に人生を生きたい
こんな方にはおすすめです。
今、学校教育においても従来の詰め込み型が見直されつつあり、ディスカッションが重視されてきています。自分の考えを持ち、それを表現できるようになることは子どもにとっても有益でしょう。
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