あらすじ
大手出版社の花形部署で働く主人公。
胃腸を壊しても、無茶ぶりされても、入社早々デキ婚した同僚が産休育休たっぷりとってるあいだ人員補充なくても、復帰しても子供が熱出した〜なんて言うたび全てを自分がフォローしてきた。
少なくともその同僚より認められてると思ってた。
それなのに不本意な異動を命じられてしまう。
はあ?アイツじゃなくて⁇なぜ私⁈
そんな幕開け。
“学年誌”のパイオニアの某出版社が舞台で、祖母と主人公である孫娘のストーリーがじわじわと繋がっていく物語。
戦中の辛い描写が出てきたり、人権がテーマで…とも言えるかもしれないけど、重さや薄暗さよりじわじわ熱いものを感じる作品
ボリュームのあるページ数だけどリズム感がよく夢中になって読みました。
登場人物がいきいきしていて、想像を立体化させる表現がとても上手な作家さんだと思います。
次に読む本
遠の眠りの(谷崎由依)
大正から昭和へ移りゆく時代、主人公の絵子(えこ)は福井県の貧しい農家に生まれた。
尋常小学校時代から読書が大好きだったが、嫁入り前の娘たちは労働力としかみなされず、隠れるようにこそこそと本を読む生活に不満を抱いていた。
一方で、唯一の男兄弟である弟の食膳にだけ上がる焼魚。
進学を目指して勉強しろと言う父親。
姉妹と弟の格差に絵子はとうとう爆発してしまうが、父の怒りはそれ以上。
勘当同然に出奔した絵子の居場所を求める旅が始まる。
不器用で馬鹿正直な絵子はやっとつかんだ居場所もその性格のせいでことごとく失うことになるが、そんな絵子に共鳴するような重要な人物との出会いが絵子に大きな影響を与えていく。
当時勢いのあった産業や、福井県初の百貨店の絢爛さ、併設された少女歌劇団の華やかさなどキラキラしたものに相反して、登場人物たちは一様に憂いを抱えていて人生の儚さを感じました。
光と影をくっきり区別しないあいまいなぼかし方がとても美しい作品だなという印象です。
おススメポイント
時代背景も似ていて、いずれも貧しい農家の娘が主人公であること、実在した企業がモデルになってるなど共通点は多いのですが、やはり子供に対する社会の向き合い方がテーマになってることが最も共通してる部分だと思います。
親の所有物、労働力から「守り、育てる」者へ。
また、女性たちも闘いながら自分の居場所を見つけていくのですが、男性もまた苦しい時代に自らを犠牲にしなければならなかった。
百年の子には光と希望が、遠の眠りのには儚さともの悲しさが、それぞれ違った魅力があるのでぜひ合わせて読んでいただきたいなと思います。
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