あらすじ
デザイン経営とは、企業のパーパスを見定め、組織文化と新たな価値を創造し続ける経営手法だ。2018年5月に経産省と特許庁が「『デザイン経営』宣言」を発表してから日本でも注目が高まってきている。
しかしこれまでデザインといえば、グラフィックデザインという言葉に表されるように「カタチのデザイン」ばかりが注目されてきた。本書が主張するのは、強いブランドを構築していくためには、パーパスに基づくコンセプトなどの「考えのデザイン」から「カタチのデザイン」まで一気通貫で実装し価値創造していくことが求められるということだ。
グッドデザイン賞に応募したことの ある企業519社を対象にしたアンケート調査によれば、デザイン経営に積極的な企業ほど売上成長率は高く、従業員からも顧客からも愛されていることがわかっている。
今後の事業成長の鍵となるのは、デザイナーだけでなく経営者自身も激変する環境の流れを感じ取り(Feel)、自らの投げかけたメッセージを顧客や従業員がどう受けとめるかを想像して(Imagine)考えをデザインし、具体的なカタチを創造していく(Create)ことなのだ。
DX/ITリテラシーとともに企業や個人の意識の差が如実に表れるのがこのデザイン経営・思考なのではないでしょうか。
A)最初から自分(たち)には無理だと投げ出す、または関心を示さない
B)DX化とデジタル化、考えのデザインとカタチのデザインの違いなど、理解と実践が表層に留まる
C)グローバルに視野を広げて学び、すぐに行動にうつす
身の回りを観察すると、大きく上記の3タイプに分けられるように思います。社会の変化の潮流を見れば、このトレンドに乗り遅れることは自らの成長を放棄することにも等しいことがわかるはずです。本書で紹介されているデザイン経営の客観的効果、3つのデザイン特性と価値創造のポイント、デザイン思考の5ステップ、パーパスに基づき組織文化をうまくデザインした企業事例などは、経営者、デザイナーだけでなく、一般ビジネスパーソンにとっても実践的示唆が得られる内容となっています。
2021年以降に出版されたデザイン経営に関する書籍として最もおすすめできる良書といえますね。
次に読む本
「動画制作」プロの仕掛け52(鎮目博道)
スマホが国民全体に広がり、5G時代を迎え、テキストや画像よりも瞬時に多くの情報を届けられる動画は、企業の認知拡大、ブランディング、商品のプロモーションを行っていく上でますます重要性が高まっている。
本書は動画の目的、評価指標といった施策設計のポイントから、YouTubeやSNSといったメディアごとの広告配信設計のコツ、視聴者の行動を引き出す企画そのもののフレームワーク「CAMP」、そして動画の幅広い活用シーンや制作・運営体制に至るまで、マーケティング実務担当者が実践で活用できるノウハウが凝縮されている。
マーケターは、共感や感動、驚きなど、人の感情を強く動かすパワーをもった動画広告の基礎知識を本書で学び、実践の中で更にノウハウを蓄積していくとよいだろう。
スマホ、テレビ、タクシー、サイネージなどを通して誰しも動画を視聴する機会は多いですが、動画企画・制作と広告配信のノウハウを学べる体系的書籍はまだまだ限られています。まずは制作・編集・配信して慣れていくプロセスが主流ですからね。しかしリスティング広告やバナー広告よりも手間暇とコストがかかる動画広告において、本書を通じて全体プロセスの体系的知識と留意点を学んでおくと、動画広告のパフォーマンスをすばやく向上させることができるはずです。制作費がかかるからと、一つの動画をテレビ、YouTube、SNS、タクシーへとマルチに展開し、認知だけでなくコンバージョンも狙いたくなりますが、それは提供者目線のアプローチであり、十分な効果が見込めなくなる理由などが本書を通じてよく理解できるでしょう。
パーパスに基づくデザイン経営を推進していく上で、動画は考えとカタチのデザインを通して人々に感動を届ける手段として効果的なメディアといえるでしょう。
しかし(潜在)顧客の心に的確に届けるには、無数の変数が存在します。ターゲットをふまえたコンセプトづくり、予算確保、最適なメディア選定、リソースアサイン、尺、構成と絵コンテ、クリエイティブ素材(セリフ、ナレーション、テロップ、キャスト、撮影、BGM、各種演出と編集等)などです。
効果を最大化するには多数の事例を学び、トライ&エラーが必要ですが、できるだけ先人の知見を活用したいものです。
コメントを残す