あらすじ
後藤篤子は53歳の主婦。四歳年上の夫と、結婚間近の娘、大学生の息子との四人暮らし。家計をやりくりして1200万円の貯金を蓄え、老後の生活は安定していたはずだった。
ところが、娘の結婚式の費用に先方から500万円の負担を要求され、夫が長男だったために、病死した舅の葬儀費用と墓石代に400万円の出費を強いられた。
貯金はたちまち300万円に減ってしまう。おまけに、夫は会社が倒産して失業、篤子もパート先を解雇されて、収入の見込みはゼロ。そのうえ、高級老人施設に入所している姑の援助に、毎月9万円の負担が止まらない。
これでは「老後の資金がありません」。窮地を脱するために奮闘する篤子に、やがて見え始めた光とは……どこの家庭でも起こりそうな、お金をめぐる騒動を描いた家族小説。
何よりもタイトルがユニークだ。小説らしくない。しかし、そこが読者の興味を引く。
読み始めると、軽快な文体でテンポよく話が展開し、思わず引き込まれてしまう。
少し頼りない夫と、しっかり者の妻。こんな夫婦は世の中には少なくないだろう。
生活苦の物語だが、適度のユーモアがあるので、決して深刻ではない。
作者の鮮やかな書きっぷりに感心した。
次に読む本
50歳から始める!老後のお金の不安がなくなる本(竹川美奈子)
「老後に2000万円の貯蓄が必要」と言われているが、「老後には○○万円必要」と言った「不安スイッチ」を押されても、動じない自分になろう、と著者は冒頭に述べている。
そのためにはどうすべきかを説いたのが本書である。
著者によれば、老後に必要なお金は一人ひとり違うので、まず自分の状況を知るために、60歳以降にもらえるお金を整理してみる。年金はいくらになるか、退職金はいくらもらえるか、など。
これに対して、老後の生活でどれだけの支出が必要になるかを比較して、家計の「見える化」をする。そうすると、老後までにいくらお金を増やせばいいかがわかる。
そのうえで、著者は50歳から始めても間に合う老後資金の増やし方を具体的に提案している。
資産形成の本はたくさん出ているが、投資のうまいやり方を説くものが多い。しかし、本書は現在の自分のお金の状況を知ることが大事という基本的なことから始めている。
したがって、それぞれの身の丈に応じたお金の増やし方を提案しているので、安心して読むことができる。
年金の仕組みを知り、積み立てNISAやiDeCoをうまく活用すれば、老後の資金形成は50歳からでも遅くはないのである。
「老後の資金がありません」の後藤篤子の生活は、やや希望が見えてきたものの、貯金の残額は300万円のままで、老後の資金が足りないのは相変わらずで不安は消えない。
そんなとき、「50歳から始める!老後のお金の不安がなくなる本」を読めばいいだろう。
50代の篤子でもお金を増やすことができる知恵が書かれているので、大いに参考になる。
篤子と同じ不安を抱えている読者も多いはずだから、おすすめの本である。
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