あらすじ
大学に入って最初の夏休みに主人公の広瀬創造が、故郷の日田に帰省することから始まる物語。
一人暮らし、恋愛、アルバイトといった経験を通して、一人の人間の葛藤と成長が如実に描写されている。
日田というのは大分県にある市の一つで、著者の岩橋 秀喜氏も大分県日田市出身ということからも、おそらく主人公の広瀬創造は岩崎氏本人を投影した人物で、『日田夏物語』は著者の自伝的な小説だと考えられます。
本編は広瀬創造が故郷に帰省し、友人とのドライブや恋愛などの新しい経験を通して、青年期特有の葛藤を抱えながらも人間的に成長していく様を描いたものです。
60年代から70年代の時代背景を彷彿とさせる当時のトレンドや出来事と共に描写されており、同じ年代を生きた人であればノスタルジックな気分に浸れると思います。
故郷に戻ると、久しく会っていなかった同級生が大人びて感じられたりと、誰でも一度は経験するであろう感覚もうまく表現されているので、自身の経験と重ねながら没頭して読むことができます。
当時の写真も多く挿入されており、実際の情景をイメージしやすい点も高評価。
次に読む本
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』 著者:七月 隆文
京都の男子大学生が道中で一人の少女に一目ぼれすることから始まる物語。
しかしその少女が発した最初の言葉は
「あなたの未来がわかるって言ったら、どうする?」
純粋な恋愛の背後に見え隠れする不穏な秘密。
二人に待ち受ける衝撃の事実に誰もが涙するだろう。
物語は京都の美大に通う男子大学生が道端で見かけた少女に一目ぼれすることから始まります。
ネタバレになるので、物語のキーを握る二人の間に隠された秘密の詳細については言及しませんが、お互いを愛すれば愛するほど、切なくなるお話です。
本書のタイトル『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の意味を考えれば勘の良い方であれば読む前から、または少し読み始めたあたりから検討がつくかもしれません。
現実世界ではありえないファンタジー的な要素が含まれているので、リアルな恋愛小説を求めている方にはあまりお勧めできませんが、とにかく美しく、淡く、はかない恋愛ものが読みたいという人に最適な本です。
映画化もされている作品で、どちらにも違った良さがあるので、合わせて鑑賞されると一層楽しめます。
既に学生時代を終えた私からすれば、『日田夏物語』も『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』も当時の純情、青春を思い出させてくれるという点で共通していたため、選定させていただきました。どちらも主人公の感情が繊細に描写されており、自身を投影しながら読めるので、より過去の美しい思い出や忘れかけていたピュアな気持ちを思い出させてくれます。
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