あらすじ
「モモ」のミヒャエル・エンデがおくる不朽のファンタジーの金字塔。小太りの冴えない少年バスチアンはある日、いじめっ子から逃げるために駆け込んだ本屋で不思議な本を見つける。「はてしない物語」というタイトルのその本を学校の屋根裏部屋で読むうちに、バスチアンは本の中の世界「ファンタージエン」へと招かれた。
ファンタージエンではバスチアンは英雄で、どんな望みも叶えられる力を授けられていた。思うがままに過ごすバスチアンだったが、中々自分の真の望みにたどり着けず、次第に物足りなさを覚え始める。やがてバスチアンの望みは的外れな方向へと向かっていき…。
「本の中に入ってみたい」という、読書好きなら一度は考えたことのある望みを体現した作品です。スポーツや勉強は出来なくても、本への愛なら誰にも負けないバスチアンにはとても共感できました。それだけに彼が次第に道を踏み外していくのには胸が痛みます。
次に読む本
かがみの孤城 辻村深月
クラスメイトとのトラブルがきっかけで中学校に行けなくなったこころはある日、自室の鏡を通じて謎の城に招かれる。城にはこころと同年代の7人の少年少女が「オオカミ様」と名乗る案内人によって集められていた。「オオカミ様」が語るには、彼らは4月から翌年の3月までの間、昼の間だけ城で「願いの鍵」を探すのだという
7人は、1人を除いて全員「学校に行っていない」中学生だった。まるで学校に行くように城に通ううちに、7人は徐々にそれぞれの事情を話し合い打ち解けていくが…。
「学校」に行くことができなくなってしまった子供の苦しみが痛いほどに伝わってくる作品です。作中の人間模様も驚くほどリアルで、「中学の時こういうことあったな…」と胸がちくりと痛む大人の読者も多いのではないでしょうか。また、終盤の城の謎が解き明かされて行く過程での怒濤の伏線回収は見事です。
学校に馴染めない子供が別世界に招かれる二つのファンタジーを選びました。自分のホームを離れて仲間と交流しながら成長していく場所という点でで、バスチアンとこころにとってファンタージエンや城は学校の代わりとも言えるかもしれません。そう考えるとバスチアンはいわば寄宿で、こころは通学の形で別世界に身を置くところにもお国柄が現れているようで面白いですね。
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