あらすじ
強盗・強姦・殺人などの凶悪犯罪を犯した非行少年たちの面接で「ケーキを3等分する」課題に取り組ませたとき、多くの少年たちが、それを正しく解くことができない、という。児童精神科医の著者は、これまで出会ってきた非行少年たちには、認知機能が乏しい、つまり、物事を正しく捉えて理解し、正しい行動を取ることが難しい傾向が多く見られる、と指摘する。
元小学校教諭としてたくさんの子どもたちと出会い、たくさんの壁にぶつかってきた私にとって、認知機能の低さが人間の問題行動につながる、というのは、衝撃的な考え方であった一方で、認知の歪みが彼らを、周りを、困惑させていたのか、と納得してしまう事例は、いくつも、いくつも思い出された。
筆者の宮口さんは、認知機能が十分でない人が、必要な支援を受けられなかったがために、加害者となり、被害者を生み、反省(しかも、本人は本質的に理解できていない)を強いられることを「教育の敗北」と表現している…
なんて、ショックな言葉だろう。どうにかして、今後の子どもたちへの関わりに生かしていきたいと思う。 この本の良いところは、認知機能を向上させる実践的なトレーニングにも触れているところ。「コグトレ」、家庭でもできると思います。ぜひ参考にしたい。
次に読む本
次に紹介する本は、全然違うジャンルの本。でも、『ケーキの切れない非行少年たち』というベストセラーを読んで、発達障害に対する支援が十分にできていない現実があちらにもこちらにもゴロゴロ存在するのだ、ということを知った、という方に、また、我が子や周りの人の言動に困り感があるという方にとって、もしかしたらヒントになる関わり方が載っているかもしれない。
発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ(shizu 平岩幹男)
この本は題名に「発達障害」と書いてあるから、健常な子を持つ親は、敬遠してしまうかもしれない。 でも、これは、全くもって、完全に、素晴らしく、子育てに応用できる。赤ちゃん~就学前の家庭教育の時期に、この考え方を知っておくことは、とても大切だと思うし、実際、困った!時に間違いなく助けてくれると思う。もしかしたら、対大人にさえ応用できるスキルかもしれない。
この本のいいところは、ABAという療育法をベースに、子どもたちが成長できるチャンス(困ったことが起きた時)に、実際に何と声をかけたらいいのか、どう対応したらうまくいくのか、ということが具体的に載っていること。 イラストも多くて、とても読みやすい。 発達障害かも?と思った時の対応について知りたいな、と思った時に、最初に手に取る1冊としても、おすすめです。
『ケーキの切れない非行少年たち』で述べられた「教育の敗北」を引き起こさないために重要なのは、子どもたちの困り感に気付いてあげること、より良い関わりや必要に応じたトレーニングによって、少しでも「うまくいく」体験を積み重ねていくこと。 児童精神科医が見出した事実と、より良い行動を引き出す実践のヒントと。我が子の育児や、療育の現場で、自分の実践に生かしていきたい2冊です。
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