『有罪、とAIは告げた』中山七里の次に読む本は

あらすじ

東京地方裁判所で勤務する新人裁判官・高遠寺円は、公判、証人尋問、証拠や鑑定書の読み込み、判例などの抽出、さらにそれらを踏まえて行う判決文作成などの業務に忙殺され、徹夜続きの毎日を送っていました。

そんな中、東京高裁総括判事の寺脇に呼び出された円は、中国の技術者が開発した「AI裁判官」について説明を受け、これが日本の司法の現場で実用に耐えるものかどうか検証するように命じられます。

「法神2」と名付けられた謎のAIには、過去の裁判記録を入力するだけで、その裁判を担当した裁判官の価値観や思考を再現し、判決文まで自動で出力するという、にわかには信じがたい能力が備わっていました。

当初、円は「法神2」の性能や実用性について懐疑的でしたが、様々な検証を進める中で驚異的な性能に驚かされ、司法の世界にAIという異物が介在することについて、様々な葛藤を抱くことになります。

人間が犯した罪は、AIのアルゴリズムによって数値化できるのか?
あるいは一人の裁判官が時間をかけて培ってきた英知や経験は簡単にデータ化できるのか?
半歩先の未来に向けて問いを投げかける、異色のリーガルミステリー。

「近い将来、AIが人間の罪を裁くようになったら?」という刺激的な「if」を提示して、基本的人権や倫理などの観点からその是非を問いかけるという、ややSF色の混じった異色のリーガルミステリーでした。

司法に関する専門用語もたくさん登場しますが、重要な言葉にはわかりやすい解説が付されているため、専門的な知識がなくても肩の力を抜いて楽しめることも大きなポイント。

現在、日本だけでなく海外の各地で、AIは様々な業務の効率化と負担の軽減に役立てられています。それはもちろん、司法の現場も例外ではありません。

しかし現状では、AIが単独で最終的な司法判断を下した事例はまだありません。その理由としては上記の通り、基本的人権や倫理面などの問題を克服できていないからということが考えられるでしょう。

しかしそれはあくまで「現状では」まだこういった事例がないという話であり、5年後、あるいは10年後といった半歩先の未来において、司法の世界にAIがどのような形で介入しているのかについては、正確な判断が難しいというのが実情です。

例えば本書の中で取り上げられていたように、軽犯罪を対象とした司法判断については、業務の負担を軽減するという意味で、これまで以上にAIが重要な役割を担うというケースは増えてくる可能性があります。

そして、司法の現場でAIの導入が進むほど新たな課題や問題が見つかり、それら一つひとつにしっかり向き合う必要が出てくることは想像に難くありません。

なお、本書の主なテーマは軽犯罪ではなく、「〇〇殺人」という非常に重く、切実なものです。
ネタバレを避けるため伏せ字を用いましたが、〇の中に入る単語が気になる方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。

単純に謎が解ける快感が味わえるだけでなく、AIと司法、ひいてはAIと人間の関係性について深く考えるきっかけが得られる1冊です。

次に読む本

『いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門』大西可奈子

私たちの暮らしに深く介入しているAI(人工知能)。

対話型の生成AIを筆頭に、日々、様々な場面でAIを活用しているけれども、周囲から「AI(人工知能)ってなんですか?」と問われたらとっさには答えられないという方が多いかもしれません。

本書では、AIという言葉の定義や、これまで進められてきた研究開発のプロセス、さらに、AIを暮らしの中で賢く役立てていく方法などについて、図版を添えてわかりやすく解説しています。

「そもそもAIってなに?」
「AIブームという言葉をしばしば耳にするけれど、具体的にいつ頃から研究が始まったの?」
「近い将来、人間の仕事がAIに奪われると聞いたけど、ほんと?」
「AIと人間が仲良く共存していくためには、どのようなことを考えればいいの?」

このような疑問を抱えている方におすすめしたい1冊です。

本書は、「ChatGPT」や「Gemini」といった具体的なアプリやサービスの使い方よりも、そもそもAIというものが生み出された経緯について、基本的な事柄から学べる1冊です。

現在は、「第3次AIブーム」のただなかにあるとされます。では、第1次と第2次のAIブームはどのような形で起こり、終焉を迎えたのか、という疑問が生じるのも当然のことでしょう。本書ではこの点についても丁寧に解説しています。

第1次、第2次のAIブームが一般的にあまり知られていないのは、当時の技術では、私たちの暮らしに深く根付くほど使い勝手の良いAIが開発できなかったからという切実な事情があります。

ところが現在、日本だけでなく世界中で巻き起こっている第3次AIブームは少し事情が異なり、例えば対話型の生成AIに代表される形で、便利な人工知能が日常生活の中に浸透しています。また、技術革新のスピードも過去のブームとは比べ物になりません。

AIというものが無視できなくなった現代において、これからどのような分野でAIの活用が広がっていくかについて、研究の動向を踏まえた現実的な予想を行った上で、AIと人類がどのように向き合っていくべきかという疑問に対する、著者(あるいは研究者たち)からの提言がなされています。

本書では、具体的なアプリやサービスの使い方よりも、AIというものの概念や研究開発の経緯が詳細に説明されているということは、すでに説明しました。

AIというシステムの概念を基礎から理解しておくことで、今後、さらに技術が進化し、新しいサービスが登場した場合にも、スムーズな理解や活用を促す助けになるのではと考えました。

おススメポイント

『有罪、とAIは告げた』を読んだ時、私たちの生活にAIという存在がどこまで浸透していくのか、ということが気になりました。

あくまでフィクションとして本書の中で取り上げられていた、「AIが一人の裁判官の人格や思考回路を完全に模倣し、司法判断を下す」ということは、現状ではまだ実現していません。

しかしそれはあくまで、「現状では」という話であって、これから数年後、あるいは数十年後の未来がどのように変化していくのか、予断は許されません。

実際、OpenAIが2022年11月に公開したChatGPTや、Googleが開発を担っているGemini(2023年2月に初めて発表された際の名称はBard)など、対話型のAIが暮らしの中にすっかり浸透し、日々、目覚ましい速度で進化しているため、半歩先の未来ですら見通すことが難しくなっているのです。

「将来的に、AIに淘汰されてなくなる仕事はあるのだろうか?」という疑問を抱いたことがある方は多いのではないでしょうか? もちろん私もその一人です。

このようなモヤモヤをすっきりさせたくて、『いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門』を手に取りましたが、この本を読んだ際に私が抱いた率直な感想は、この先、時代がどのように変容しても、AIによって人間の生活が完全に淘汰されることはないのではないか? というものでした。

というのも、人間が得意とする分野とAIが得意とする分野は明確に違うからです。具体的に、AIは「0から1を作り出す」という「創造」のプロセスを苦手としています。

AIの力を部分的に用いる場合であれ、創造という行為には、必ず人間の力が必要なのです。この点については、紹介した2冊の中に共通して明記されています。

AIを生み出したのが人間なら、AIを使うのもまた人間です。
「人権や著作権など様々な権利を踏まえた倫理的な判断の尊重」といった部分を中心に、今後、どのようにAIと向き合い、QOLの向上に役立てていくのかを考えることが、なによりも重要ではないかと感じました。




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