「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか 三宅香帆の次に読む本は

あらすじ

本や漫画、エンタメにたくさん触れているのに、どうしても面白く話ができない。決して口が達者ではない自分には、面白い話をするのは無理なのだーー。
そうやって諦めてしまうのは勿体ない!ちょっとした技術さえあれば、あなたの話は格段に面白くなる。いま最注目の文芸評論家が、その「5つの技術」を教えてくれる本。

話が面白くない。
かれこれ10数年も前に言われた元カレのこんな一言が、いまも心にブッ刺さったままのわたし。
読書も好きで、それなりに本は読んできたはずなのに、全く面白くプレゼンできない。これはもう天性のものだから、仕方がないと思ってきました。
ですが、著者はたった5つの技術により、どのように読書体験を深堀りし、話題を広げていくかを示してくれます。その5つはすべて、難しい知識や思考力を必要とするものではなく、ちょっとしたポイントばかり。でも、その「ちょっとしたこと」が、明日からの自分の世界を広げてくれそう。そんな希望を抱かせてくれる本でした。
第2部の「応用実践編」で、著者が実際に多様な作品をテーマに、「5つの技術」を実践してみせてくれているのも楽しい。「鑑賞のプロ」の手にかかると、こんな読み方があるのか!という新たな気付きも得られます。

次に読む本

ヒゲのガハクごはん帖 文・梅村由美 画・山口晃

人物や街並みを、「その筆どんだけ細いんですか」と聞きたくなるほどきわめて緻密に描くことで知られる画家の山口晃氏。その妻である著者が、夫の「ガハク」との食事の風景を記録した食エッセイ。

「ガハクとの晩の食卓は基本一汁三菜」(72頁)らしい。
しかし、本書の最初の章で記された「特に計画もなく」作った献立は、ご飯と味噌汁にくわえて(1)焼いた薄切り豚肉と付け合わせ、(2)フリルレタスとしめじの炒め物、(3)きゅうりの塩もみにふりかけ、(4)ブロッコリーのマヨネーズがけ。一汁三菜どころかおかずが4品!野菜たっぷりのメニューに加え、ご飯は黒もち麦入りという、パートナーの身体を考えつくした超健康的献立なのです。絶対にマネできない。
さらに驚きなのは、「ガハク」の好物である大根と油揚げの味噌汁について、なぜ好きなのかを考察しているくだり。著者は「ガハク」の言動をもとに、この味噌汁の特色を4つに分類したうえで「秀逸なのだと思われる」と推測しているのです。味噌汁ひとつにこの考察、これはひとえに「ガハク」の好きなメニューを突き詰めて考えているからこそなのではないでしょうか。
手料理とは愛。そして外食でともに口にする食事や、旅先での変わった食体験もまた、夫婦の絆を深めてくれているように感じます。そんな豊かな気持ちになれるエッセイでした。

おススメポイント

話が面白くなる「技術」の1つとして著者が挙げているのが、「発見」。作品に書かれていないものを見つける、というテクニックです。
それに倣うならば、著者が挙げた「5つの技術」について、明記されてはいないけれど確実に必要なものがあります。それは「話す相手」です。
「ヒゲのガハクごはん帖」では、ガハクの妻である著者があとがきでこう明かしています。
「伏線とは予期せぬところで回収されるのだと感じたのは、かつて私が遠方に出張するたびに「お土産何がいい?」とガハクに聞いても、必ず「お土産はいいから、食日記をつけて何を食べたか教えて」と言われてきたことだ。(略)そうやって食べたものを共有し、ずっと後まで記憶して楽しもうとする感覚は、このエッセイを書く要素に寄与しているのかもしれない。」(101頁)
つまり、ガハクのオーダーに著者が答えたおかげで、読者は良質なエッセイを読むことができたわけです。
喜び、楽しみ、面白さを共有したいーー。面白く伝える技術を獲得した後は、そう思える相手がいることの尊さを噛み締めるのはどうでしょうか。




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