あらすじ
40歳のフリーライター、猪名川健人は独身。いまだに大学生時代に住み始めたマンションに住み続けている。ある日、マンションの大家を介して、婚活イベント会社「ドリーム・ハピネス・プランニング」の紹介記事を書くことに。記事を書くためにも、取材を兼ねて婚活イベントに参加する。そこには、成婚率が素晴らしく高いと噂で、「婚活マエストロ」と呼ばれる女性・鏡原さんがいた。渋々ながら参加した婚活イベントと、鏡原さんの出会いによって、健人の気持ちは少しずつ変わっていく。
最初に抱いた感想は、「婚活にもグラデーションがあるのだな」ということ。
本書に登場する「ドリーム・ハピネス・プランニング」が手掛けるイベントは、ガツガツ結婚一直線!というよりも、まったりおしゃべり仲間を見つける感じのゆるさが売り。若者からシニアまで、幅広い世代を対象にしているという特徴もあります。
そんなゆるさの中でも、婚活マエストロこと鏡原さんは、参加者の真剣な思いに答えるために、使命感を持って仕事をしています。
在宅ライターとして、適当にこたつ記事を量産する毎日の健人は、鏡原さんの姿を目の当たりにして、仕事とそして婚活イベントに対する意識が少しずつ変わっていきます。
鏡原さんの仕事に対する矜持と、健人の前向きな変化を読んでいると、「自分もがんばろう」と思えてきます。
二人の関係の行方や、他の参加者たちの出会いの顛末が気になり、ドキドキわくわくしながら一気読みでした。
次に読む本
書棚の本と猫日和(佐鳥 理)
物語の舞台は、シェア型書店「フレール」。棚のスペースを借りて、棚主と呼ばれる人々が、各々の売りたい本を並べる書店。
章ごとに語り手が変わり、本への想いや、棚を介したやりとりが綴られていく連作短編。
各章の主人公たちが、次の章にも登場して、少しずつ人の縁が繋がっていく展開が素敵です。
他人がもたらす何かが、それぞれの人の価値観や興味関心を広げ、深めていくきっかけになる。そこに、人生の面白さを感じました。
棚主ごとのカラーがあり、本の楽しみ方や棚に込める思い、受け取る思いも人それぞれ。
彼らの思いが誰かの人生につながる瞬間の、「やった!」という喜びを、噛み締めながら読み終えました。
おススメポイント
2冊とも、読後感が清々しく、人との出会いっていいなと思わせてくれる本です。
誰かの真剣な想いが、誰かの人生につながって、互いに影響するという不思議な奇跡。
婚活と書店、まったく趣の異なる場所ではありますが、
多くの選択肢の中から、自分にぴったりな出会いを求めるという点では、
実は共通点が多いのかもしれません。
自分の真剣な気持ちは、きっと誰かに伝わる。
そんな風に、新しい出会いに一歩踏み出す勇気と希望が持てる2冊なので、ぜひ一緒に読んでいただきたいです!
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