『体験格差』今井悠介の次に読む本は

あらすじ

著者が代表理事を務めるNPO法人チャンス・フォー・チルドレンは子供の貧困や教育格差解消に向けて活動を続けてきた。
2022年に「子供の体験格差に特化した全国調査」を実施。
「年収300万円以下の低所得家庭では、「体験」の機会が過去1年間で「ゼロ」の状態である子供達が、全体の3人に1人近くにのぼる」ことが明らかになった。
「体験」とは主に習い事やクラブ活動週末・長期休みに参加する旅行、お祭りなどの行事、社会教育施設でのアクティビティをさす。
本書は今まで語られてこなかった子どもたちの間で広がる体験格差に焦点を当て、その実態と解消のための活動を紹介する。

本書の内容
・体験格差の実態
・保護者たちの生の声
・格差を解消するための方略

りお

私は学生時代に子どもの貧困に関するボランティアに参加したことがある。
当時その活動の中で、子どもたちの間で広がる体験の格差を感じていた。
「習い事のための道具が買えない」「塾に行かせてあげられない」といった悩みをきいた。
保護者が子どもたちに与えてあげたいと思っていても経済的な理由からできないという現実があった。
子供たちは親を気遣い、体験活動に対する興味を持っていないふりをしたり、始めから親には相談しないこともある。
そういった苦悩を大人も子供も抱えている実態が日本に存在している。

本書を読了後にボランティア活動で得た体験を思い出した。
日本の貧困は全体の1割強といわれ、外からは見えにくい。
子どもの体験格差や相対的貧困の認知が教育現場以外にも広がり、関心を抱く人が増えるきっかけになれば幸いである。

次に読む本

『少年籠城』櫛木理宇

地方温泉街で子供食堂を兼ねる飲食店にて、立てこもり事件が勃発。
立てこもり犯は少年2人組で、警官から盗んだ銃を所持している。
数日前に男児の惨殺遺体が河川敷で見つかり、少年らは事件の容疑者として扱われている。
彼らは無実を要求するため、人質をとって立てこもりに挑んだのだ。
店主の司と子供食堂に訪れた数人の子どもたちが人質になっている。
人質は無事助かるのか、少年2人は本当に無実なのか、男児の惨殺事件の犯人は誰か。

ネグレクト、不登校、浮浪児、文字も読めないほどの低学歴、虐待などが蔓延する貧困の中で、子どもたちに起こる問題にメスを入れている作品である。

りお

地方の温泉街を舞台に起こる悲惨な事件の数々。
この温泉街はシングルの家庭や、訳あって流れ着いた者たちが集まっている。
十分な教育を受けられなかった子どもたちは、発達のための機会を損失していき、貧困は連鎖する。
フィクションであるものの、目を背けたくなるような真実が散りばめられている。

「生きているうちは『自己責任』、死んではじめて『かわいそう』と言われる」
「生きているうちに、ぼくは、ここを逃げたかった」

過酷な環境の中で、子どもたちはどうやって負の連鎖から脱出すればいいのかを改めて考えた。
精一杯生きているだけで、その貧困と悲惨な環境が引き継がれていく状況は当人たちだけではどうしようもない。
十分な食事、教育、そして安心して生活のできる環境と心の安定をすべての子どもたちが享受するために何ができるのか。
子育てを家庭の責任であるとして、全て保護者に押し付けてはならない。
地域・社会・学校ぐるみで子育て家庭を支えられる外部の仕組みの必要性を感じた。

おススメポイント

りお

今回紹介した2冊は子どもの貧困から起こる問題にスポットを当てたものだ。
『体験格差』はノンフィクションであり、NPO法人が行ってきた子どもの貧困問題に対する活動と体験格差の全国調査が主題になっている。
『少年籠城』はフィクションの小説であり、地方温泉街を舞台にした殺人事件をテーマに子供の貧困を取り扱う。
『体験格差』で述べた貧困による体験格差による悪影響は、『少年籠城』を読了後に実感することと思う。
貧困の見えづらい日本で、実際に起こっている現実に目を向け、改めて子どもたちの教育と環境について考えたい。


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