『白が5なら、黒は3』 ジョン・ヴァーチャーの次に読む本は

あらすじ

主人公ボビーは白人として生きていたが、実は父親が黒人だということを隠していた。

当時はO・J・シンプソン事件の裁判が全米で注目されていた。そんな時、親友アーロンが出所する。アーロンは白人至上主義者になっており、たまたま出会った黒人青年に対して傷害事件を起こし、ボビーもその場に居合わせてしまう。

ボビーはそんな親友に対して、自分に黒人の血が流れていることを必死で隠そうとする。

ゆめこ

アーロンはもともと黒人に憧れ、黒人かぶれの振る舞いをしていた。白人がそうすることを黒人は受け入れず、アーロンはいじめにあっていた。その後入った刑務所であまりに悲惨な経験をし、別人のようになってしまったのだ。

対してボビーは人種差別主義者の祖父を持ち、その意識が根付いた頃に、実は父親が黒人だと知った。ボビーが自身のアイデンティティに苦しむのは容易に想像出来る。

ボビーの父親もまた、苦悩を抱えている。黒人でありながら肌の色は薄いため、〝マイノリティの中のマイノリティ〟という存在だった。母もアルコールの問題を抱えており、人種の問題のみならず、登場人物全員の苦悩について描かれる。

登場人物の中で唯一、人種による偏見に囚われて生きるのがくだらないと述べるミッシェルの存在にほっとする。

誰もがそう思えればいいのだが、深く根差した人種差別の意識がすぐに解決できるわけもない。この小説の登場人物達それぞれについて、ではどうすれば良かったのかと考えてもなかなか正解が見つからない。

次に読む本

『少女、女、ほか』 バーナディン・エヴァリスト

黒人女性として様々な差別を経験して来たアマ。彼女の演劇『ダホメ王国最後のアマゾン』がナショナル・シアターで上演されることになり、彼女を取り巻く人達がここに集結する。

アマを始めとした12人の女性の人生について、英国における人種やフェミニズム、ジェンダーやLBGTQ、階級や教育などに触れながら赤裸々に語られる。時に笑い、時に傷付き、それでも希望に溢れた人生の物語。

ゆめこ

一瞬ためらうくらいの分厚さと、句点や「」のない独特な文体。しかし実際に女性達のお喋りを聞いているような感覚に陥り、どんどん読み進められる。絶望的とも思えるような出来事も、この軽快な文体のおかげで重くなりすぎずに読める。

英国に生きる黒人女性達について順に描かれるが、実は前に登場した人と意外な繋がりがあったりして、様々な人生に深く関われたような気になった。

時に辛く過酷な経験が語られることもあるが、思わず笑ってしまうようなエピソードや、感動して涙するような場面もあり、様々な方向に感情を揺すぶられる小説だ。

まさに人生は無常、変化していくものなのだ。誰もが心に傷を負っていて、悲しみがあれば喜びもある、だから人生は面白いと思える一冊。

おススメポイント

ゆめこ

それぞれアメリカとイギリスと舞台は違えど、どちらも黒人の人種差別について描かれる。

肌の色が違うというだけで、これだけ生きていくことに困難を伴うことが、日本人として日本で生活している自分にはなかなか実感出来ない。

しかしこの2冊を読んで様々な人生に触れ、考えるきっかけになればいいと思う。




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