『鈍色幻視行』 恩田陸の次に読む本は

あらすじ

呪われた小説と言われる『夜果つるところ』。それはかつて映像化を試みた際、撮影中の事故により何度も失敗している所以だ。
小説家の梢とその夫で弁護士の雅春は、『夜果つるところ』の関係者達と共に豪華客船の旅に出る。
そこでは小説の作者である飯合梓の謎について、関係者達が語り合う。

ゆめこ

いわくつきの小説に、誰も逃げ出すことの出来ない豪華客船の旅、そして登場人物達は映画監督や評論家に女優、漫画家といったかなり濃い目のキャラクター。どう考えてもわくわくする組み合わせに加え、どことなく漂う不穏な雰囲気作りは流石である。
白黒はっきりした結末が用意されているわけではないのだが、謎について話し合うだけでなく、母と子の関係、夫婦や恋人の関係など様々な人間同士の関わりにも触れ、読み応えがある。登場人物達の会話も魅力的で、引き込まれてしまう。
映画や読書が好きな著者らしく、文中様々な映画や小説の話が出てくるのも楽しめた。

次に読む本

『ナイルに死す』 アガサ・クリスティー

莫大な財産と美貌を合わせ持つリネット・リッジウェイは、サイモン・ドイルと結婚し、新婚旅行でエジプトに向かう。しかしサイモンはもともとリネットの親友であるジャクリーンの婚約者であった。ジャクリーンは銃を持ち、2人の旅行先に現れる。
ナイル河をさかのぼる豪華客船には名探偵ポワロも乗り合わせ、様々な思惑を秘めた人々が集結する。やがて事件が起こった__。

ゆめこ

目に浮かぶような人物描写や赤裸々な感情表現が魅力的で、全く古さを感じさせないのが流石だ。
事件そのものも意外性があり、ポワロが謎を解いていく様はもちろん面白いのだが、登場人物達の会話がとにかく楽しい。
また、最後まで読むと実は冒頭からずっと伏線が張られていたことに気付き、感心した。

自分もエジプト観光旅行をしているような気分にもなれ、二重に楽しめる小説。「探偵小説と外国旅行は逃避的思考という点で共通している」という著者の持論には納得させられた。

おススメポイント

ゆめこ

どちらも豪華客船が舞台のミステリー。
といっても、実際に事件が起こる『ナイルに死す』に対し、『鈍色幻視行』では何か事件が起こるわけではない。
この2冊に共通する魅力は何といっても登場人物達の会話や心理描写にあると思う。
どちらもストーリー展開が巧みで、もちろん結末が気になるものではあるが、そこで繰り広げられる人間模様もじっくり味わいたい小説である。


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