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『テヘランでロリータを読む』アーザル・ナフィーシーの次に読む本は

あらすじ

著者は1979年のイラン革命後にテヘラン大学の教員となり英文学を教えていたが、ヴェールの着用を拒否して大学から追放される。
その後教え子の中から最も優秀な7人の女生徒を選び、自宅で文学について話し合う会を作った。
本書では、そこで議論された文学についてのみならず、当時の原理主義的なムスリム体制下で女性が受けた理不尽な迫害や、その後始まったイラン・イラク戦争での空爆の恐怖など、著者自身や生徒たちの実体験も語られる。
女性として生きていく上で様々な困難に遭遇しながらも、文学の持つ力を信じた著者の回想録。

ゆめこ

イスラム革命語のテヘランでは、女性はヒジャブの着用を義務付けられ、女性の結婚最低年齢は9歳、さらに女性は法律上男性の半分の価値しかないとされたという。
大学でも女性は服装検査をしなければ校内に入れず、教員も法律に従わなければ罰せられた。少しでも「西洋的な」気配がするというだけで投獄され、処刑されることもあったのだ。
そして当時文学作品はいかなる価値も認められず、全て政治的に解釈された。
著者は文中で、「想像の生み出した偉大な作品が、現在女性として囲われている状況の中でどのように役に立つか」考えたいと述べている。文学を読むことで人間の複雑さを知り、他者の持つ様々な側面を知ることが出来る。他者の問題や苦痛に気付けない、共感の欠如こそが罪であり、まさにそれこそが体制の罪なのだという部分には強く共感した。

改めて文学の持つ力に気付かされると共に、自分の読みたい小説を自由に手に入れて読めることに感謝した。
英文科で教えていた著者の講義の内容も純粋に面白く、読み応えのある作品。

次に読む本

『低地』ジュンパ・ラヒリ

カルカッタ郊外に住む仲睦まじい兄弟のスバシュとウダヤン。
やがて成長し、兄のスバシュはアメリカに渡る。弟のウダヤンはカルカッタで結婚するが、過激な革命運動に携わるようになる。そしてついに両親と妻の目の前で射殺されてしまう。
その知らせを聞いたスバシュはカルカッタへ戻り、ウダヤンの子を宿していた妻のガウリをカルカッタから連れ出し、アメリカで自分と新しい家族を築こうとする。
大切な人をある日突然失った時、それぞれ家族はその後どう生きるのか。
インドとアメリカを舞台とした家族の物語。

ゆめこ

人生において、漠然と思い描いていた未来や希望がある日突然閉ざされてしまったら、その後人はどうやって生きていくのかということを考えさせられた。
物語はカルカッタ郊外とアメリカのロードアイランドの情景を交えながら、静かな語り口で進んでいくのだが、登場人物たちの心情が強く突き刺さってくる。
ガウリは学生で勉強したがっていたが、娘は嫁ぎ先で暮らして息子は実家に留まるものだというインドの慣習から、ウダヤンの実家での嫁としての仕事に終われる日々を過ごす。それでも未来のウダヤンとの生活のために努力を続けていたが、革命にのめり込んでいたウダヤンは過激分子と見なされ警察に射殺されてしまう。
その後の展開を読んでガウリを身勝手だという見方もあるだろうが、最後まで読み進めると、ガウリに共感とまでは言わずとも理解できなくはない。自分が何も知らぬ間に革命の共犯とされていたことへの怒り、何よりも子供と3人で歩むはずだった未来を突然奪われたことへの怒りと悲しみは計り知れない。
ウダヤンを失ったのはスバシュと両親も同じである。それぞれが複雑な思いを抱えるが故に、うまく関わることが出来ない。それでも何とか生きていく人間の強さや温かさが感じられる小説だった。

おススメポイント

ゆめこ

この2作は、イランとインドという女性が生きていく上で困難を伴う国の話である。
どちらも著者は女性で渡米しているため、その自由な空気に触れてさらに感じるところはあったのかと思う。
そしてどちらも革命をきっかけに生き方が変わってしまった人達や、国の体制に抗い、正義を信じる人達について描かれ、さらに、女性が学ぶということについても描かれている。

『テヘランでロリータを読む』では文学を読むことで人間の複雑さを知り、他者の様々な側面を知ることが出来ると述べているが、『低地』ではまさに登場人物達の複雑な心理が丁寧に描かれている。
改めて文学の持つ力を知るという意味で、ぜひ読んでほしい2冊である。

この記事を書いた人

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ゆめこ

読書と映画鑑賞とワインが好きな主婦です。
小説が好きで、特にここ何年かは北欧ミステリーにはまってます。
日本人の作家さんでは恩田陸さん•小川洋子さん•西加奈子さん•桐野夏生さんが好きです。

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