君といた日の続き(辻堂ゆめ)の次に読む本は

あらすじ

主にミステリーを描いている辻堂 ゆめの作品。

1人娘を病で亡くした後、妻と離婚、アパートに1人暮らしとなった主人公の譲が買い物に行こうとすると、家の前の道に小学生の少女が蹲っているのを見つける。

譲は、ちぃ子と名乗る少女の話と知識から、彼女が三、四十年前の過去からやって来た事を知る。

取り敢えずちぃ子を自宅のアパートに匿った譲は、「過去に戻れるまで、亡くなった娘さんの代わりになる」と言う申し出を、戸惑いながらも受け入れ、夏休み期間だけの擬似的な親子関係が始まる。

ホモサピエンス2号

タイムスリップがテーマではあるが、SF色が薄く、特有の科学描写が無いため、そういったものが苦手な方でも読みやすいと思います。
読み進めているうちに気になってくるのは、やはり。ちぃ子がタイムスリップしてしまった原因と彼女自身の正体でしょう。
それらが明らかになる終盤では驚きの展開を見せてくれました。そういう意味ではミステリーの要素も少し入っていると思います。

主人公の譲は、娘に不幸があった後に妻との離婚があり、人生に喜びを見出せなくなっている。

ちぃ子は感情豊かでリアクションが大きい可愛らしい少女として描かれている。
彼女は児童養護施設にいたため、両親と遊んだ経験がない。その為、主人公との触れ合いを通じて、父親との関係を経験してみたいと考えている。

ちぃ子は、自分が生きていたバブル景気から様変わりした未来を見て驚きを隠せない様子。
過去から未来に来たので仕方のない事だが、後の世で起こる事件について興味を持ち、主人公から、バブル崩壊、就職難、震災やコロナ禍について聞かされ恐れ慄く。
しかし、その反面、Netflixなどのストリーミング配信やスマートフォンなどの未来の技術やガジェットの便利さに感嘆し、使いこなすなど順応性も高い。

おそらく、私のように昭和後期から平成初期生まれの人は、何気ない主人公とちぃ子の話を聞いていて懐かしい気持ちになると思います。(アップリケ、テレホンカード、千円札・五千円札の肖像画など)
緩やかに変わっているから意識しませんが、数十年前の人から見たら違和感を感じる程に変わっているのだと分かったのは結構面白いです。

序盤から中盤では、主人公はちぃ子と夏休みを通して遊ぶ事で、娘ともっと遊んであげるべきだったという後悔を精算していき、ちぃ子の方も父親との関係を擬似体験する事で幸福を感じてく過程が描かれていました。

基本的にはちぃ子がやりたいと言った事に主人公が付き合うだけなのですが、子供の遊びを一緒にやるだけにしても楽しそうに感じて、父親の歓びが文面からひしひしと伝わって来ました
登場人物達が、その幸せな時間が期間限定である事を意識しており、精一杯思い出を作ろうとしているのが健気に感じられます。

読み終わった時、絶望しても、希望を抱いて生きていこうと思える余韻を残してくれる作品です。

次に読む本

あなたの人生の物語(テッド・チャン)

1999年に発表された短編であり、ネビュラ賞中編小説部門受賞。ドゥニ・ヴィルヌーブ監督により「メッセージ」というタイトルで映画化もされた作品。

事故で娘を亡くし夫とも別れた主人公のルイーズ。

ある日、地球の至る所に宇宙船が降り立った。
異星人襲来の原因究明の為に、ルイーズ達言語学者を含めた科学者のチームが軍によって集められ、物理学者であるゲーリーと、異星人”ヘプタポッド”と交流を通して言語を解読していく。
そのうちに、ルイーズの時間感覚と意識に変化が生じて…

ホモサピエンス2号

物語はルイーズの一人称で進んでいき、ヘプタポッドの言語の習得をするための交流と解読作業、娘との思い出を辿り、また亡き娘に語りかけるような回想のシーンに分かれています。

世界観として、サピアウォーフの仮説(人の意識は扱っている言語の影響を受ける)の通り、ヘプタポッドの言語を理解するにつれて、ルイーズの意識にも影響が出てきます。

ラストの、常人と違う感覚を身につけたルイーズの選択がとても深い余韻を残します。

読み終わった後は、「自分なら、どうするであろうか?」と言う事を否応なしに考えさせられる作品です。

おススメポイント

ホモサピエンス2号

「君といた日の続き」のある登場人物と「あなたの人生の物語」の主人公の選択が似ていたからです。

自分が同じ状況に陥ったり、境遇になったりしたらとてもじゃないが同じ道は選べないと感じたのと同時に

選択そのものに強烈な愛と勇気を感じました。是非色々な方に読んで欲しい2冊です。




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