あらすじ
芥川賞受賞歴のある京大法学部出身の作者が、実際に行った講演を再構成したものである。
作者はもともと死刑制度を必要と考える「残置派」であったが、「廃止派」に変わってしまった。その理由として、警察のずさんな捜査によって冤罪事件が発生し、罪のない人が死刑になっていること、加害者の生育環境が酷いこと、人を殺してはいけない、という絶対的な規範に死刑が反しているからである。
私は死刑残置派である。やはり、親しい友人や肉親が殺されたら、報復感情が涌き出て死刑を望むと考えるからである。しかし、2011年に起きたノルウェー連続テロ事件やルワンダ内線では、暴力による報復を望んでおらず、「愛と知恵」で解決を望んでいることを知り、その考えをさらに知りたいと思った。
次に読む本
さまよう刃(東野圭吾)
娘を青年3人に性的暴行の上、殺害されてしまった父親が復讐心で一人を殺してしまい、さらに軽井沢に隠れてもう一人を殺そうとする、まさに死刑残置派の筆頭のような行動をとる。
一方、死刑廃止派のように父の復讐を阻止するべく警察も行動をし、ラストでは青年、父親、警察が相見えてしまう。
娘を殺された父親の気持ちが痛いほどわかった。また、復讐を実行に移し、それを長らく続ける体力にも恐れ入った。私の推測だが、作者も死刑残置派なのではないだろうか。
おススメポイント
『死刑について』で作者が多角的な目線から死刑残置派、死刑反対派の話をしており、死刑残置派の具体的なエピソードを『さまよう刃』で記載されている。死刑廃止派の人は、この二作品を続けて読んでいただきたい。
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