あらすじ
貧困家庭で育ち、ほとんど人と話すこともなく過ごしてきたアキ。15歳の初夏、自分のことを、フィンランドの俳優”アキ・マケライネン”だと言ってくれる友に出会う。親友とアキ・マケライネンとの出会いはアキのそれからの人生をガラリと変えてしまう。
輝く高校時代を経て、二人の人生はとても過酷な方向へ流れてゆく。
もがいて耐えて30代半ば。アキの親友”俺”はまだ何者にもなれてない。社会と折り合いがつかず満身創痍になっていたある日、フィンランドから銀色のテープでグルグル巻きにされた小包が届く。
貧困を根源とする若者の苦悩がテーマになっているので、読んでいてつらくなる人もいると思う。
貧困は、選択肢を奪い、思考を奪い、尊厳も奪いかねず、本人の意思とは関係なくそのような状況になっていることが多く、直面するのは辛い話題だけど良いテーマだった。
西加奈子さんの飄々とした作風が過酷なテーマにも希望を持てるものにしていて夢中になって読むことができた。
次に読む本
ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治)
精神科医の著者が、少年院勤務等の経験に基づいて非行少年の多くが抱える問題を提起している。
幼いうちに発達障害、知的障害に気づいてくれる大人がいれば、その子たちは大切に保護され適切な教育を受けられるかもしれないが、誰にも気づかれない場合や”境界”にいる子供たちは他の子供たちと同じ教室で、様々なことが認知できないまま成長してしまう。
本来、大切に守り育てないといけない子供たちが認知機能の弱さにより加害者となってしまうことに対して「教育の敗北」と記されており、ところどころに著者の温かみを感じる。
必要な人に著者のような支援者が現れれば良いなと思うし、多くの人に読んでもらいたい良書だと思う。
アキは親友という良き理解者に出会い少なくとも精神は救われたと思う。
ただ、経済的な支援、解決に導いてくれる人が現れた時、親友は支援者のアドバイスにしたがい一つずつ解決していくが、アキは自分に支援が必要だと判断しなかった。
自分を正しく理解できなければ支援を求めることができない。とても印象的なエピソード。
必要な人が適切な支援が受けられるようになるにはまず、理解を深めることだと思うので、ぜひ色々な方に読んでいただきたい二冊。
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