パーパス 「意義化」する経済とその先(佐々木康裕 )の次に読む本は

あらすじ

2020 年 春 の IPSOS による 国際 比較 調査 で「人間の活動が気候変動につながっている」と考える人の比率は、世界平均が77%に対し日本は53%とダントツの最下位だ。世界中の企業は今、地球環境の変化、消費者の価値観の変化、企業の競争環境の変化などさまざまな潮流の結節点として、その存在意義=パーパスが問われている。具体的には、「人間中心」から「地球中心」へ、「株主利益至上主義」から「社会善」へ、 「破壊的イノベーション」から「優しいビジネス」へと企業活動の目的が変化しているのだ。企業活動と対となる消費者の意識・活動もライフスタイルから社会課題や政治問題に対してどういうスタンスをとるかが重視されてきている。本書ではこうしたパーパス経営を実践する世界の企業の取り組み事例とともに、パーパスをもとにどう組織を動的に駆動させていくかの方法論まで紹介されている。

そら丸
そら丸

ITリテラシーやマネーリテラシーとともに、人や企業によって認識レベルと実践度に大きなギャップがあるのが、このパーパスなのではないでしょうか。それは10年スパン以上の長期的問題であり、かつ自分の生活圏だけではわかりづらい地球全体視点に基づく問題でもあるので、理性的に深く考えないと自分ごととして捉えられないからでしょう。例えばパーパスの観点からみたGAFAに対する認識です。GAFAって何?という人、GAFAは時代の先をいっていて憧れるよねという人、本書に書かれているようなGAFA周辺のテックラッシュの動きをファクトとして把握し、その後の企業のあり方をリサーチしている人という違いです。

地球環境保護に対する対策は待ったなしです。世の中の変化のスピードもますます加速しています。企業・個人が今後生き残っていくためには、このパーパスという視点で自らのスタンスを明確にしていくことが求められているといえますね。

次に読む本

選択の科学(シーナ・アイエンガー)

なぜ選択が重要なのか、重要なのにわたしたちはなぜ選択を誤ってしまいがちなのか、そしてこうした誤った判断からの選択を防ぐにはどうしたらいいのかを、膨大な研究と著者の特異な原体験をからめて解き明かしているのが本書だ。
人生とは選択と偶然と運命の三元連立方程式である。これがシーク教徒の両親のもとに生まれ高校時代に全盲となるも、「選択」を研究テーマとしてコロンビア大学教授となった著者の人生観となっている。そして方程式の中で「選択」だけが自分の意思でコントロールできる変数であり、かつ人間の本能として幸福感に直結するからこそ非常に重要なのだ。注意すべきはこの自己決定感を何に対して感じるかは、文化的背景によって異なる点だ。実際、原理主義の宗教の信徒は選択の自由を制限されていても自分の人生を自分で決めているという意識をもち、鬱病率も低いのだ。
ではこの重要な「選択」という判断・行為においてわたしたちは生活の中で多くの誤りを犯してしまうのはなぜだろうか。脳には直感的な自動システムと理性的な熟慮システムという2つのメカニズムが働いていることが知られているが、多くの「選択」場面でこの2つのシステムが導く答えは一致しない。葛藤の末、誘惑や経験則によってもたらされる自動システムの判断が将来的な熟慮システムからみると逆の選択をもたらしてしまうことが誤りの理由なのだ。具体的にはマシュマロ・テストのような短期の誘惑、感覚的な情報による想起のしやすさ、情報提示の枠組みの違いをもたらすフレーミング、バブル相場の判断のような関連付け、思い込みだけの裏付けばかり求めてしまう確認バイアスなどだ。更にこうした2つのシステムの葛藤からの誤りだけでなく、選択肢の多さも人間の情報処理に大きな影響を及ぼすことが実証されている。選択肢は多ければよいわけではないのだ。
ではこうした誤った選択を防ぐためにわたしたちはどうすればよいのだろうか。まずはこうした自分の選択に対するこれまでの考えを改め、認知能力の制約を認識することだろう。そして専門知識を増やして選択から最小限の労力で最大限の効果を引き出すよう限界を押し広げていくことだ。自分が精通していない分野ではその道の専門家の力を活用することで、懸命な選択に近づくことができるはずだ。

そら丸
そら丸

わたしたちは朝起きてから寝るまで、無意識にも意識的にも多数の選択をしていることがわかります。何時に起きるか、何を食べるか、どの服を着るのか、誰と話すか、何をインプットして何をアウトプットするのか。人生という長いスパンでは、受験、入社、転職・副業、起業、結婚・出産・離婚といったライフイベントの前ではとても大きな決断をしています。そしてこれまた数え切れぐらいの選択の失敗を犯し、後悔することが多いのも事実でしょう。本書はこうした無数の選択に何が影響しているのか、どういうメカニズムが働いてのかを豊富な実験データをもとに解き明かしてくれています。日々目にするニュースの釣りタイトル、巧妙に購買を誘発してくる広告、仕事での眉唾な提案などの裏の意図を見極めるにも役立つ内容ともいえます。

選択はできる限り自分にとって後悔ないよう正しく行いたいと思うことは、誰しも共通の願いです。自分自身の選択にどのような誤りの傾向があるのかを知り、文化的背景や認知レベルによって人の選択基準が異なることを理解することは、人生の幸福感を増すことに寄与してくれるはずです。

そら丸
そら丸

地球の環境問題への対応、企業のあり方とパーパス、個人としての生き方。これらはまさに大きな選択が求められる領域であり、一個人にとっては直感的な自動システムだけでは判断前の現状認識さえできない大きなイシューといえます。特に環境問題は、企業にとってこれまでの株主利益至上主義、個人にとっては生活効率性や生理的快楽と大きな矛盾が生じやすく、熟慮システムを強く機能させていく必要があります。また、異なる文化や価値観をもつ人々の間でも捉え方が異なり、対応方法の複雑性を増大させています。シーナ・アイエンガー教授が言われるようにまずはこのイシューに対する自らの認知能力やバイアスを認識することがスタート地点になるでしょう。

一企業、一個人だけではできることが限られますが、地球全体の共同体として行動の選択が求められる中で、知識を増やして自らができることを模索しつつ、専門家とも連携していくこと。これがこの2冊のからの結節点となる、今後のわたしたちの行動指針といえますね。




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