あらすじ
牛の細胞から培養したお肉。土を必要としない野菜。誰でもプロ並みに作れるようになるフライパン。
少し前だったら、どれも「ドラえもん」の中でしかお目にかかれなかった代物ではないでしょうか。
夢を現実に変えてくれたもの、それがフードテック(食のIOT化)です。
本書では、フードテックとは何かから始まり、最先端の技術、取り組み、目指すべき未来を紹介していきます。
フードテック。なんだか、実験室の中の無機質なイメージですよね?
そう感じる人にこそ、おススメ!
本書では企業人たちのインタビューが章ごとに挟まれているのですが、それが熱い!
多くの人が語るのは、SDGsの実現(つまりは地球を救うことでもある)と、「人を幸せにしたい」という強い思い。それらを原動力に技術革新を進めているという。フードテック産業の根底にあるものは、「おいしい」体験の記憶。それを未来へ繋げていくこと。
食べることは、空腹を満たすためだけにあるのではなく、人の心と深くつながっているのだと改めて考えさせられる一冊です。
最先端のテクノロジーで食をIT化。
そういう本なのに、読み進めているうちに祖母が作ってくれたドーナツを思い出しました。
不格好で穴も空いていない、粉っぽいドーナツ。
それは、夏休みに川遊びから帰ってくると必ず用意していてくれたもので、玄関から漂う匂いだけで幸せな気持ちになれたのです。
フードテックの根底にあるものも、この祖母のドーナツに通ずるものがある気がします。
世界中の人が平等に「おいしい」体験ができること。それは、すべての人に「美味しかった思い出」をプレゼントすることではないかしら。テクノロジーは、心を豊かにするためにあるのかもしれないなあ。
次に読む本
海と山のオムレツ(カルミネ・アバーテ)
人生で一番美味しかったオムレツは、祖母が作ってくれた「海と山のオムレツ」。
美味しいごはんの記憶は、温かい。いつも愛しい人や美しい景色、楽しい時間と結びついているから。
南イタリアで育った著者の人生を彩った、忘れられない「美味しい記憶」をつづった短編小説集。
「人生で一番美味しかったものは?」
そう問われてまず頭に浮かぶのは、食べ物よりもその時の状況だったりするのではないでしょうか。
例えば、幼いころのクリスマスに食べたケーキ。(クリームの上に乗っていたイチゴが妙にキラキラして見えた)
初めて食べたハンバーガー。(家族全員がなぜか大笑いしていた)
そんな記憶を呼び覚まされ、胸がキュンとする。
食べることは、自分の大切な記憶と深く結びついている。毎日の食事に感謝したくなる一冊です。
「食べる」という同じテーマを、一方は最新テクノロジーで、もう一方は個人史で取り上げています。
真逆の観点から描かれた本を読むことで、多角的に「食べる」ことを考えることができるのではないでしょうか。
わたしたちにとって、とても身近な食べること。
あえて離れたジャンルを読み比べることで、自分が「食べる」ことに対して何をどう大切に思っているのかが浮かび上がってくるような気がします。
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