あらすじ
推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。 SNSが炎上した翌日、あかりはライブに行ったときのままのリュックを持って登校してしまう。ルーズリーフとペンくらいしか学校で使えるものなどない。 動揺していたのもある。ただ、動揺がなくてもあかりはみんなが難なくこなせることがうまくできない。 推しを推すことだけが生活の中心だったあかり。”背骨”を失ってしまうかもしれない。実感がわかないまま不安定な気持ちに揺れながらもあかりは自分自身を見つめる。
ポップな表紙とタイトルからは意外なシリアスさを含んだ作品だった。 推しを推すことが生活の根幹だったあかり。 無意識のうちに、推しというツールを使って生きるスキルを身につけようと必死にもがいてるようにも見える。 解決策は描かれていないけれど、生きづらさを感じている人の代弁をしてくれているような作品だと思った。
次に読む本
まったく、青くない(黒田小暑)
協調性がなく、どこか淡白なギンマの歌声は魅力的だった。 ギンマのカリスマ性と、歌声に惹かれ集まったメンバー4人での生活がはじまる。 3人はギンマのメジャーデビューを目指し、献身的に支えるが、それぞれの思いがいびつなカタチに膨らんでゆき、やがて4人の関係も少しずつ変化してゆく。
キャラクター設定がわかりやすく、人数も多くないためとても読みやすかった。 好意を寄せられる側、憧れの対象であるギンマが持つあるコンプレックスなど妙に人間臭く、キャラクターが勝手に動き出してくれる。 愛憎による相手への歪んだ向き合い方など、人間の複雑さをうまくあらわしていて独特な空気感だった。次回作が楽しみになる作家さん。
若い作者による不安定で繊細な青き時代の物語として選びました。 何かに夢中になっていたあの頃の物語としても受けとれるし、個人で解決することはできない問題を内包していて、どちらもけっこう深みのある内容です。 登場人物たちは、どこかドライに自分自身を見つめていて、全体的な作風も粘り気のない軽やかな印象なので一気に読みすすめることができました。
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