あらすじ
日本におけるコロナ禍の真実を、感染症数理モデルの専門家である「8割おじさん」こと西浦教授の立場から描く。専門家会議の一員として分析した事実と、事実を曲解・不採用とする政治との対立、政策批判を通じて専門家批判を展開するマスコミへの葛藤など、知られざる苦悩を乗り越え、日本の感染症対策の新常態を築き上げる専門家の情熱が伝わる一冊。
感染拡大を見せているコロナ禍について、第1波から現在に至る日本の対策がどのようなデータに基づいて形成されているかが理解できました。また、著者の西浦氏をはじめとした感染症数理モデルの専門家の計算が極めて高精度である反面、経済への打撃を気にする政府、自治体によって必ずしも必要とされる対策が取られていない状況に理論と実践の難しさを感じました。ただ、これらの状況は、日常のマスコミ報道では詳細に語られず、PCR検査の拡充など根拠や計画性のない対策ばかりが叫ばれ、専門家の信頼が揺らいでいる現状は、日本の感染症対策の新たな課題であると考えさせられました。
次に読む本
「ニュースの嘘を見抜け」 辛坊治郎
森友学園、豊洲市場移転、年金、沖縄基地、凶悪犯罪などを例にとり、マスコミ報道と事実とのギャップを考察する。マスコミ各社の主義主張がいかに報道内容に影響を与え、時には世論への忖度や検証不足までもが混入し、事実が歪曲されて大衆に届いているかを解説する。真の情報リテラシーとは、情報の発信者の情報まで理解することなのである。
自分が情報を得るとき、最も信頼性が高いと考えられている新聞報道においてさえ、事実をありのまま伝えておらず、そこには新聞各社の主義思想、事実誤認が反映されていることに驚きを隠せなかった。また情報リテラシーを考えるとき、一般には報道内容の信頼性を対象にするが、実は重要であるにもかかわらず、報道されていない事実も存在していることを知り、自分がいかに情報弱者であるかを思い知らされた。特定の媒体に書いてあるから信じるという姿勢は非常に危険で、真の情報リテラシーというのは、情報の発信者に関する情報まで理解したうえで情報を得ることであるのだと理解し、考え方を改めることができた。
新型コロナウィルス感染症の報道は、近時の感染拡大により、政策批判、ひいては専門家への批判へ傾いている。しかし、「クラスター対策」、「3蜜」、「夜の街」などの施策がどのようなデータ、分析に基づいているかについて、その事実は詳しく報じられていない。「理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナから命を守れ!」は今最もホットな新型コロナウィルス感染症の事実を知る材料となり、「ニュースの嘘を見抜け」はマスコミにより、いかに事実が歪曲して報道されるのかを知るきっかけを提供する。この2冊により情報リテラシーの「新常態」を獲得することができると考えます。
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