あらすじ
高校生の「僕」が病院で偶然拾った文庫本のタイトルは「共病文庫」-それはクラスメイトの山内桜良の持ち物だった。
文庫の中身は日記になっており、そこには病気でもうすぐ死んでしまう桜良の思いが綴られていた。
思いがけない形で病気のことを知ってしまった「僕」に対し、このことはクラスメイトには言わないでほしいと頼む桜良。
そして、「僕」と桜良の奇妙な交流が始まった。
明るい桜良に引っ張られていくうち、「僕」の人間関係にも変化が表れていく。
刻々と迫る別れの時間を感じながらも、二人の気持ちは徐々に接近していくが…。
作品後半、桜良は病気ではなく、通り魔により刺殺されて亡くなります。
通り魔によって殺される直前会う約束をしていた「僕」は桜良への尊敬の言葉として「君の膵臓を食べたい」とメールで送っていました。
そして「共病文庫」に残された桜良から「僕」へのメッセージもまた「君の膵臓を食べたい」だったのです。
ヒロインが重い病を抱えている…という超王道設定でありながら、どこか新しさを感じさせる青春小説です。一見、主人公と桜良の恋愛関係がメインテーマに見えますが、実際は男女関係を超えたもっと大きな人と人とのつながりを感じさせるストーリーになっています。
コミュニケーションに難のある「僕」と、明るくふるまっていながら実は親友にも秘密を抱えている桜良。深い部分で他人と繋がれない二人が、ちょっとしたきっかけからお互いを知り、そして尊敬に近い感情を持っていく過程がみずみずしく書かれています。
『君の膵臓を食べたい』という一見猟奇的なタイトルが、作品の後半に一転し、大きな感動を感じさせる仕掛けに繋がっている点は必見です。
次に読む本
『君の膵臓を食べたい』を読んだ人には、『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』がお勧めです。こちらはコミックエッセイになりますが、愛した相手がなくなった時、その一部を自分の体に取り込みたいという思いは2冊に共通していると思います。
『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。(著者:宮川さとし)』
『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』は著者の宮川さとしさんが、最愛のお母さんをがんで亡くしたときの思いをエッセイ漫画として綴ったものです。
こちらも『君の膵臓を食べたい』と同様に衝撃的なタイトルです。しかしこの題名は大切な人の遺骨を見たとき、その骨とさえ別れがたいと感じてしまう人の気持ちをストレートに表しています。
自分を愛してくれたお母さんの何気ないやさしさ、日常ではときどき「うざったい」と思ってしまったことも今思い返せばどれだけありがたいことだったのか。親の愛を大人になってから振り返る、すべての大人にとって共感できる内容になっているのではないでしょうか。
2冊とも人の死を扱っているので重くなりがちですが、ラストは希望に繋がる終わり方をしています。
大切な人の死を乗り越えて未来に向かう主人公の姿に、励まされる人も多いのではないでしょうか。
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